2008年5月8日木曜日

Marriage Yellow? -Happy-

劇団スリーマン旗揚げ第一回公演




Marriage Yellow?
-Happy?-

最終版!!



原案: ピーチ(ニコラス風)
脚本: 富士河 千之介
出演: 多賀 一世
                                   

出  演: 
富田 隆広 : 富士河 千之介
久慈 ひろみ: 多賀 一世

原  案: ピーチ(ニコラス風)
脚  本: 富士河 千之介
舞台監督: 前田 天
音響効果: 中原 結
音  楽: 加々美 愛
照  明: Bunkyo’s + α
制  作: 平山 静香
協  力: 松本 謙一
製作著作: Three Man Office
Special Thanks To:
  湯西川温泉 かめや平家の庄
  文教大学附属高校 演劇部
  スタジオTOT
  神楽坂 die Pratze

プロローグ
舞台にふたりが立っている
富田と久慈だ
富田「本日は盛島良太君、すずさん、ご結婚おめでとうございます。この晴れやかな日に、僕と同期
   のきみが結婚するのをとてもうれしく思います。僕は新郎盛島君の友人代表、富田隆弘と申しま
  す。
   僕と盛島君の出会いは新入社員研修の修善寺の温泉でした。同じ班で一通り行動していたので
   すが、たまたま風呂に入っていたとき、君が風呂場の絶対転びそうもないところで見事に、す
   ってんころりと転び、その君を仕方なく周囲の冷たい視線をはねとばしながら医務室までおん               ぶして運んだことに始まります。今きみは心の中でなんでこんなおめでたい日にこっぱずかしい
  話をするんだと軽く憤りをかんじてるかもしれませんが、硬いこと言うなよ。
   とにかくご結婚本当におめでとうございます。これからの日々を人がうらやむくらい幸せに
おすごしください」

久慈「盛島さん、そしてすず先輩。ご結婚おめでとうございます。私は先輩方と同じマルホウ食品
  で働いております。久慈ひろみと申します。
   私はすず先輩とは同じ部署で働いてもう2年になります。最初のころは伝票処理など今考え
  ればものすごく単純なこともなにひとつうまくできずに毎日、今日はここには出席していない
  パチンコ球係長に毎日怒られていました。あ、パチンコ球っていうのは係長の頭がパチンコ球
  のようにものすごいツヤとテカリを放っていたからみんなで影でそう呼んでいたんです。そんなひとも今は北海道に飛ばされてしまいました。そんなパチンコ球に怒られてばかりで、もうやめてやるとヤケになっていたとき、屋上でなぐさめてくれたのがすずさんでした。おかげでパチンコ球が飛ばされた後も今に至るまでやめることなくしっかり働いているのは先輩のおかげであります。
   この場を借りて先輩にお礼を言いたいと思います。先輩、ありがとうございます! そしておめでとうございます!」
   
富田「新郎友人代表 富田 隆弘」
久慈「新婦後輩代表 久慈 ひろみ」
ひととおり、読み終えて
   久慈はスピーチをしっかりたたんで懐にしまう。
   富田は思い切りそれを破る
暗転





第一章 宴の前
ここは、都内の結婚式場「三芳園」である。
  盛島良太・阿佐ヶ谷すずの結婚式が終わり、休憩時間となっている。次は披露宴である。
  その控え室。そこに2人の男女が左右のドアから入ってくる。
富田「(ドアの向こうには人がいる)・・・わかった。9時に焼肉カントリーね。じゃね。」
久慈「(同じく)・・・じゃ、下のホールから入ればいいんですね。わかりました。」
  二人、振り返り、初めて視線を交わす。
富田「・・・ども」
久慈「・・・どうも」
富田・久慈「・・・あの~!」
  声が合わさり、びっくり。
富田「あ・・・どうぞ」
久慈「いや・・・そちらこそ どうぞ」
富田「そ、そう。あのー。あのさ、君、盛島家の今日の結婚式の人?」
久慈「そうです。かな先輩の」
富田「かなちゃんの?」
久慈「そうです。」
富田「そっか。あ、おれ、盛島良太の友達の富田。」
久慈「富田さんですね、あたしは、久慈ひろみっていいます。」
富田「久慈さんね。」
久慈「さん付けは堅苦しいから、久慈で。」
富田「わかった。久慈。」
久慈「なんかムカつくので、やっぱ久慈さんで。」
富田「どっちなんだよ」
久慈「久慈さんで・・・」
富田「久慈さん」
久慈「さわやかな響きです。」
富田「そうかな・・・ま、どうでもいいんだけど。」
久慈「マイナスイオン」
富田「癒されるねーっておれはエアコンかい?」
久慈「寒いつながりで」
富田「失礼だよ・・・あ、そうそう。今日の披露宴、ごちそう何出てくるんだろうね」
久慈「やっぱ、おめでたいで、鯛の御頭とか。」
富田「ありえるねえ。ほかには?」
久慈「海老の殻とか蟹の甲羅に入ったグラタン」
富田「海のものが多いね。ま妥当においしいかな。俺は大好き」
久慈「あたし、たべらんないですけど」
富田「魚、いや・・・」
久慈「いや。」
   ふたり、きまずい沈黙
富田「・・・あ、いや、オレ、あれが嫌いなんだよ。ステーキの横に必ず付いてくる人参の甘いやつ。」
久慈「あー、なんとかグラッセですね。」
富田「そうそうそう。なんとかグラッセ。あの甘いのが許せない。苦いのか、甘いのか、はっきりしろ!。」
久慈「あれは口直しと、色取りのために必要なんです」
富田「でもなーにんじんてもともとニガ甘いでしょ。それをもっと強調しただけのような気がするんだけど」
久慈「そうすると、あれですか?人参のグラッセがダメなら、酢豚の中のパイナップルも許せないんですか?」
富田「いいところに目を付けたね。もちろん!」
久慈「あたしは、好きですけどね。」
富田「よくない!甘いのか、酸っぱいのかハッキリしろ!(鼻息荒く)」
久慈「背中にタランチュラがはってますよ。」
富田「ウァーッ!」
久慈「ほら落ち着いた。」
富田「何それ」
久慈「我が家に伝わるリラックス法です。」
富田「全然リラックスできないよ。」
久慈「そうですか?父は、今の方法をいつも母にやってもらって、ひゃっくりを止めてもらってますよ。」
富田「リラックス法じゃないじゃん」
久慈「まちがってますかねー」
富田「今日帰ったら、伝えてあげなさい。」
久慈「親孝行します。」
富田「そうね。ところで、ご祝儀は持ってきた?」
久慈「はい、もちろんです。」
富田「礼儀がなってるね・・・(バッグからご祝儀袋を取り出す)・・・○万円は痛かったなー」
久慈「(同じくバッグの中から)そうですよね。近頃の・・・」
 久慈、バッグから「薄皮まんじゅう(温泉まんじゅう)」の箱を取り出す。
 富田それを見て・・・
富田「・・・」
久慈「(かまわず)温泉ときたら、黒あんだけじゃなくて、白あんもあるんですねー」
富田「もしもし・・・」
久慈「はい」
富田「なに、それ」
久慈「まんじゅう」
富田「わかってるよ。」
久慈「ご祝儀まんじゅう」
富田「聞いたことないよ!」
久慈「お二人が出会ったのが、新入社員研修の温泉だったってことを聞いたんで、そこに行って思い出  の味を・・・と思いまして」
富田「いいかい?普通、ご祝儀って言ったら、お金だよ。」
久慈「いや、普通過ぎるのは、よくありませんよ。」
富田「そうかな。・・・ったく、今の高校生ときたら」
久慈「フリーターです。」
富田「え?」
久慈「見た目で判断しないでください。」
富田「いや・・・あ・・・」
久慈「どうせ、あたしのこと。眼鏡かけてるから・・・ウー、ワォ!」
富田「吠えた・・・」
久慈「吠えたくもなります。」
富田「吠えるのもいいけど、まんじゅうはさすがに・・・。じゃ、ちょっとお金貸して
   あげるから、それを使いなさい。」
久慈「ありがとうございます!」
 富田、財布からお金を出す。
 久慈、それを受け取ろうとするが。
久慈「あのー」
富田「え」
久慈「袋は、どうしましょう?そのド派手な袋。」
富田「ご祝儀袋ね!あとでコンビ二で買ってきなよ。」
久慈「わかりました」
富田「ほんとうにわかってんのかな」
久慈「何か言いました?」
富田「いやー、なんにも言ってないよ・・・地獄耳だな」
久慈「小学校のころから耳だけはいいんですよね」
  ここで、富田の携帯がなる
富田「もしもし・・・お、あー盛島―。今?今ね、控え室。んー、なんっつうの、ツキノワグマの間。あれ、
  すごい名前だねー。普通さー、松の間とか、孔雀の間とかなんだけど。ツキノワグマの間って、月って言葉だけじゃんきれいなとこって。だからなのかな。・・・え?スピーチ?・・・ああスピーチね・・・
  待っててよ。とっておきの話すから。ん、じゃあね」
久慈「ずいぶん長電話なんですね。」
富田「そんなことないよ。」
久慈「あと」
富田「ん」
久慈「見てて気づいたんですけど、電話のスタイルおかしいですよ」
富田「おかしくなんかないよ。」
久慈「もいっかい、やってみてください」
  富田、やってみる
  富田の電話は口のほうをなぜか鼻より上に向ける
久慈「ほら」
富田「おかしくないよ。ぜんぜん」
久慈「なんで、あがってるんですか」
富田「え?・・・あ、ほんとだ」
久慈「ほかの人によくいわれません?」
富田「言われたことないねー。今きづいた」
久慈「どうしてそうなっちゃったんですかねー」
富田「おれの実家の電話のね、話すとこが、長年のつばで臭くてさ。それを匂わないように、鼻から遠ざけてやってたからかなー」
久慈「なおしましょう」
富田「そうだねーって、君に言われたかないよ」
久慈「素直じゃないな」
富田「んなこたないよ。あ、さっきから先輩って言ってたけど・・・」
久慈「ああ、先輩とは同じ会社で。」
富田「え?そうなの?オレも同じ会社なんだけど。」
久慈「奇遇ですね」
富田「オレは、8階の菓子部門」
久慈「あたしは、6階のペットフード部門です。」
富田「なるほど。階が違うから会わないのかな?かなちゃんも6階だからね」
久慈「あたし、犬、好きなんです。」
富田「じゃ、適職かな。」
久慈「キャットフード担当です。」
富田「社会ってそんなもんだよ」
久慈「そういう富田さんは、どこですか?」
富田「子供用オマケ担当。」
久慈「そんなとこありましたっけ」
富田「あるよ。小さい子にわくわくするちっちゃいおもちゃを作るんだよ。」
久慈「いいですね。夢がある。」
富田「子供嫌いなのに・・・」
久慈「ご愁傷様です」
富田「あんがと。」
  そこに久慈の携帯がなる
久慈「もしもし、あ、せんぱーい。おめでとうございますー。どうでした、式のほうは?・・・え、三々九度のお酒が練習のときと違って本物の日本酒になってたから超びっくりって、あたりまえじゃないですかー。練習のときは何飲んでたんですか?・・・え、ウォッカってもっとアルコールはいってんじゃないですか!・・・いいかげんにしてくださいよ先輩。はいはい・・・え?歌ですか。ああ(ちょっとあせりぎみで)だ、だいじょうぶですよ。今練習してるんで、あ、はいすいません。それじゃ」
富田「へー、このあと、歌うたうの?」
久慈「友達と一緒に、ドリカムの『未来予想図』と『てんとう虫のサンバ』です。」
富田「え、ポルノグラフティーの『アポロ』でしょ!」

第二章 Man & Woman
久慈「なんでそんな歌うたうんですか?」
富田「いいんだよ。『ぼっくらの生まれてくーる ずっとずっと前にはもう!』」
久慈「全然合わない」
富田「ドリカムとか、てんとう虫のサンバとか、当たり前すぎて、ちっともおもしろくない。」
久慈「そのマンネリこそ、いいんじゃないですか。」
富田「マンネリがいいなんて、ドリフじゃないんだから。」
久慈「マンネリもありますけど、ドリカムは先輩が高校のときから好きなんですよ」
富田「ドリカム好きなんて当たり前すぎんだよ」
久慈「いいじゃないですか。人の好みにケチつけないでください」
富田「B’zの『ALONE』でも歌ってやろうかな?」
久慈「どうして、そう、関係ない曲ばっか歌うんですか?」
富田「いや、ポルノもB’zも盛島が好きな曲なんだ。」
久慈「あ、あたしの真似してる」
富田「真似じゃないよほんとだよ」
久慈「なんかうそくさい」
富田「ほんとだって。今年の春の慰安旅行、夜の宴会でなにやったと思う?」
久慈「え、なにしたんですか」
富田「ジージャンのノースリーブとジー短パンで
久慈「あ、ビデオで見た。ウルトラソウル ヘイ!」
富田「太陽のコマチエンジェル」
久慈「古!ブレイクのきっかけじゃないですか」
富田「それも、ひとりで稲葉と松本やってたよ。ほうきをギター代わりにひいて」
久慈「田舎の小学生なみですね」
富田「暑かったよ。あいつのリードぼうき」
久慈「見たかったです。あ、でも、さっき聞いたんですけど、スピーチ完成したんですか。」
富田「いや、ゴミ箱で、永遠の眠りを・・・」
久慈「なんてことですか。こんな、すず先輩の晴れ晴れしい舞台を・・・」
 その時、雷鳴とともに雨が強く降ってくる。
富田「雷雨なんだけど・・・」
久慈「おだまり!」
富田「君は、一世紀前の女王様かい?」
久慈「まんじゅう食べます?」
富田「なんだよ、いきなり。」
久慈「だって、富田さんから、ご祝儀もらえるから。」
富田「人任せなのかい!」
久慈「いいです!もう!」
 久慈、まんじゅうをやけ食い
富田「そんな食べると、太っちゃうぞ」
久慈「いいんです。太ってやる!」
富田「おいおい・・・でも、なんでフリーターになろうと思ったの?」
久慈「※☆○$△%(まんじゅうを食べながらなので、何を言っているかわからない)」
富田「食べきってから、しゃべろうね。」
久慈「なんか、中学を卒業したら。高校ですよってのが、つまらなくて。みんなが行くから、あたしも。ってのも、イヤだったし。」
富田「結構、ヘソまがり?」
久慈「生まれつきですから。勉強もあんまり好きじゃないし」
富田「オレも、それは否定しないよ。」
久慈「普通は、この話聞くと絶対、親は許してくれたの?とかって。」
富田「君らの世代だったら、親の話が出ても当然だろう。盛島の親だって、すずちゃんのこと、ずっと
   軽そうな女だって反対してたんだから。」
久慈「その辺のこと、スピーチに書けば、ちょっと涙さそえるかも。」
富田「そうだな・・・仕方ない、書くか」
久慈「そうです。なにごとも小さいきっかけが、いい結果を生むんですよ」
富田「じゃ、久慈さん、歌うたってよ」
久慈「・・・え?」
富田「小さいきっかけが、いい結果生むんだろ?さっき携帯でかなちゃんと話してたとき、歌っていわれて顔が青くなったの見逃さなかったんだけどなー」
久慈「いや・・・歌は練習しなくとも歌えますよ」
富田「正直、歌、苦手なんでしょ」
久慈「え?・・・ははは、全然・・・(言葉とは、うらはらにおちつかない)」
富田「今のうちに練習しといたら?なんならアポロ一緒に歌おうか」
久慈「い・・・いいです!」
富田「人が親切に言ってるのに」
久慈「(いやそうに)ありがとうございます!」
富田「(負けずに)どういたしまして」
久慈「それにしても、先輩のウェディングドレス、きれいだったなー」
富田「え、会ったの?」
久慈「ええ、この部屋に来る前に」
富田「なーんだ、おれも見たかったな」
久慈「もう間に合いませんよ。また、念入りにメイクしてるみたいですから」
富田「厚塗り三重奏かー。ま、それでもいってこよ」
久慈「ああ!だめですよ。スピーチ書きましょう」
富田「・・・しょうがねえな。あ、ペン貸してくれる?」
久慈「シャーボでいいですか?」
富田「シャーボって?」
久慈「シャーペンとボールペンが一緒になったペンです。」
富田「ったく。四〇代の持ってそうなシブいの持ってんねーっ」
久慈「ネームペンもありますよ。ハンコとペンが一緒になったヤツ。」
富田「君は、人事部の部長かい?(ペンを受け取って)ありがとう」
 富田、ペンを持ち、紙に書こうとするが・・・
久慈「あ、でも、親とケンカしてるとか、反対されたとか、やっぱ失礼ですかね。」
富田「失礼は失礼かもしんないけど・・・ま、面白けりゃいいじゃん?」
久慈「ウケればいいんですか」
富田「そう、面白ければなにをやってもゆるされるんだよ」
久慈「あたしはそう思わないんですけど。」
富田「思わなければ、思わないでいいよ。」
久慈「なんかいい加減ですね」
富田「いいんだよ。じゃ、書くから、静かにして」
久慈「なんなんですかそれ? さんざん人にしゃべらしておいて黙れなんて。」
富田「いいじゃない。へるもんじゃないし。」
久慈「しっつれいな。今度は富田さんのこと教えてくださいよ」
富田「うるさいな。おれはものを書くときは静かなところじゃないとかけないんだよ。いい?静かにしてくれる?」
   久慈、いすに座りなおす
   富田、真剣に書き始める
   久慈、だまってるが退屈になり、まんじゅうを食べ始める
   突然、
久慈「まんじゅう、いりません?」
富田「いいよ」
久慈「おいしいですよ」
富田「いいって」
久慈「あの鉄人がつくったんですよ」
富田「え?和の道場さん?」
久慈「イタリアンの鉄人です。名前は忘れました」
富田「ぜんぜんあわないよ・・・もう!君が邪魔するから、何書こうとしたか
  わすれちゃったよ!」
久慈「たいして考えてないくせに・・・」
富田「考えてるよ」
久慈「聞こえました?」
富田「はっきりとね」
久慈「富田さんも地獄耳」
富田「仲間にいれないでよ。」
久慈「ばらしますよ」
富田「なにを?」
久慈「聴力異常なしって」
富田「健康診断か!」
   そのとき、久慈に電話が
久慈「はい・・・あ、先輩。どうしました?・・・・え?(顔色が変わる)・・・わ、わかりました。すぐ探してみます」
   久慈 電話切る
富田「どしたの」
久慈「指輪・・・披露宴で使う結婚指輪なくしたみたいなんです!」
富田「え?」
暗転
 


明転
   ふたり、いすでぐったり
富田「しっかし、なんでなくすんだろ・・・」
久慈「先輩らしいっちゃあ、先輩らしいですよね、2個、それも入れ物ごとなくすなんて」
富田「かなちゃん、ちょっとおっちょこちょいだからな。」
久慈「でも、なんで、披露宴のほうで指輪交換なんですかね」
富田「ああ、一応、式のほうは神前結婚式だろ、だから、そういう場に結婚指輪交換なんて、外国っぽい儀式を行うのはなんか合わないんじゃないかって。それで披露宴のほうにまわしたみたい」
久慈「こだわってますねー」
富田「最近は多いみたいよ。披露宴はケーキカットだけじゃなんかアクションが足んないらしくて。」
久慈「でも詰め込みすぎは、見るほうも疲れますよね」
富田「そうそう。」
久慈「ごちそうさまって感じですよね。」
富田「しょせん、人のしあわせだからな」
久慈「じゃ、富田さんの幸せ教えてくださいよー」
富田「しつこいなー」
久慈「盛島さんとはどういうおつきあいなんですか」
富田「盛島?ああ、同期」
久慈「同期ってことは、先輩と会った温泉にも行ったんですか?」
富田「うん。あ、そこの風呂場でね、あいつおもいっきりすっころびやがってさ。立てなくなっちゃって
  そこで介抱してやったのが俺」
久慈「なんか変な出会いですね」
富田「ね。それいらい昇進も降格もしないで、どんぐりの背比べでずっと友達」
久慈「それ、スピーチで使えますよ。」
富田「下書きのときは書いたね。でもなんか・・・」
久慈「え」
富田「でもなんかかいててさ、つまんなくて」
久慈「つまんない・・・?」
富田「うーんなんっていうのかな。結局くやしいのかな?」
久慈「くやしい?」
富田「先に結婚されて。越されたみたいな」
久慈「別に勝負じゃないんですから。富田さんだって付き合ってる人ひとりやふたりくらいいるんでしょ?」
富田「いないよ。」
久慈「え?」
富田「いーなーい!」
久慈「もてないんですか?」
富田「そんなんじゃないよ。ただ、前の恋愛がね・・・」
久慈「いろいろあったんですね」
富田「・・・いろいろね・・・」
久慈「もっと教えてくださいよ」
富田「え?しょうがないな。6年間もつきあったけどね。最後はいえないな・・・言いたくない」
久慈「・・・いやなこと聞いちゃいましたね。すいません」
富田「・・・いいよ。もう終わったことなんだから」
久慈「でもひきずってます?」
富田「んー、ひきずってはいないけどね・・・それいらいなんか恋愛に興味もてなくて」
久慈「だから、スピーチ捨てちゃったんですね」
富田「自分の恋愛もろくにできないのに、あいつのこと喜んでられっかって」
久慈「富田さんってひがみ根性まるだしですね」
富田「よく言われる」
久慈「でしょうね。じゃあ、気をとりなおしてスピーチ書きましょう」
富田「だから書けないんだよ。」
久慈「書けますよ。今までの恋愛経験を生かして・・・そうですね、幸せについてなんてどうですか?」
富田「何回もいってんだろ!幸せを喜ぶなんて、無理なんだってば!」
久慈「誰も幸せを喜べなんていってないじゃないですか。」
富田「え!」
第3章 はなむけ
久慈「いいですか?人の幸せをほめようとするから書けなくなるんです。別に祝わなくてもいいかーぐらいの気持ちでいけばなんとでもなるんです。」
富田「そ、そんなことしていいの?」
久慈「いや、最終的には祝うんですよ。最終的にはね。」
富田「なんだ。結局は祝うんじゃん」
久慈「そりゃ祝わなきゃだめですよ。披露宴、おめでたい場なんだから。でも書くときは、きばんないで書いていくんです。」
富田「んー。わかったような。わかんないような」
久慈「さ、書きましょう」
   富田、ペンを持ち
富田「本日は・・・えー・・・ご結婚おめでとうございます。」
久慈「違うな」
富田「え」
久慈「当たり前すぎる。三十点」
富田「君は欽ちゃんかい?」
久慈「お客さんのシャンペン飲む手が止まります」
富田「じゃ、どうすりゃいいのよ」
久慈「夏休みの宿題を八月三十日に友達のやったやつから丸写しする小学生みたい」
富田「意味わかんない」
久慈「答えを教えてもらおうなんて世の中そんなに甘かないって例えです」
富田「わかりにくいよ」
久慈「まったく、大人はこれだからしょうがないですよね。いいですか?よく聞いてください!おふたり!幸せとは、このまんじゅうのようにだんなさんが薄皮。奥さんが餡子のようにしっくりいくか、いかないかで決まります」
富田「まんじゅう?」
久慈「どうです?このセンス?グッジョブ」
富田「そうは思えないんだけど」
久慈「ひねくれてますね。」
富田「こっちのせりふだよ! 」
久慈「夫婦の幸せを、まんじゅうに例えて話のきっかけを作る。古いやり方かもしれませんが、聞いてるほうは、おっ、て話に集中できるじゃないですか。」
富田「そうかな・・・」
久慈「まさにグッジョブですよ。わかんないですか?グッドジョブ。いい仕事」
富田「直訳するなよ!」
久慈「わかんないですかねー。この文章構成力。人間って結局、センスなんですよね。」
富田「え?」
久慈「ユーモアとか笑いってのは努力してつかむもんじゃなくて、生まれつきそなわってるもんなんですよ。あたしみたいに」
富田「・・・なんだと?」
久慈「富田さんはたぶん、笑いのセンスなしですね。おもしろけりゃ、なにしてもいいってさっきいいましたよね?おもしろけりゃって、自分がぜんぜん面白くもないのに、よく言えますよね、あんなセリフ」
富田「・・・なに調子乗ってしゃべってんだよ。」
久慈「あら、お気に召しませんでしたか?」
富田「うるさい!」
久慈「おお、怖・・・大人はこれだから・・・」
富田「生まれつきなんて、あるわけないだろ!みんな、自分で努力して掴み取っていくんだよ。センスなんていやな言葉使うんじゃない!」
久慈「そうですかね」
富田「じゃあ、幸せも生まれつきだっていうのかよ。幸せな人は生まれたときからずっと幸せで、不幸な人はずっと不幸なの?」
久慈「それもあながち、うそとはいえませんよ。あたしたちは不幸。先輩たちはやっぱり幸せの星に生まれたひとたちなんですよ」
富田「なにさっきから、聞いてりゃ、調子乗りやがって、十代のクセに四、五十のじいさんみたいな口きいてんだよ。もう、あったまきた!おい、ひょっとして、きみ?ほんとはスピーチかいてないんじゃないの?」
久慈「・・・え・・・」
富田「そうだよ。こんなに適当にベラベラ言って、自分の言葉に酔いしれて。人に書かせておいて後で適当にパクるつもりじゃないの?」
久慈「そんなつもりは・・・」
富田「おい、ちょっと、スピーチ見せてよ」
久慈「いやですよ」
富田「見せろ」
  富田、久慈のかばんをひったくり、あさる
  久慈、取り戻す
  ふたり、とりあい
久慈「ちょっと! かばんの中身見るなんて「おしゃれ関係」の古館伊知郎ですか」
富田「きみはそんな大物ゲストでもないだろ!」
  ついにゲット
富田、封筒をとりだし
  開く
  それは白紙
   そして、中からもうひとつ
   指輪ケースもでてくる
富田「!」
久慈「・・・」
富田「どういうことだよ」
久慈「・・・」
富田「スピーチは白紙。それに、このケースはなんなんだ !」
久慈「・・・」
富田「どうした?何にもいえないのかよ。さっきまであれほどべらべらしゃべってたくせに」
久慈「・・・」
富田「スピーチは白紙、しかも指輪も盗むなんて、悪いとこばっかり大人に似たね」
久慈「・・・」
富田「どろぼーだよ。どろぼー。」
久慈「・・・」
富田「おい、どうしたドロボー?」
久慈「・・・はー、もう、ばれちまったものは仕方ないですね」
富田「お、こそどろじゃなくて居直り強盗かい?」
久慈「えー、もうなんとでもおっしゃい!・・・あたしも人の幸せ喜べないんです」
富田「・・・え?」
久慈「正直いうと富田さんとおんなじ、恋愛恐怖症かもしれません。この前、つきあってた彼氏と別れたんです。」
富田「・・・それは・・・つらいよね」
久慈「つらいなんて他人事みたいに言わないでください。あたしは富田さんみたいに6年もつきあったわけじゃないです。3ヶ月でした。最後はケンカしちゃって。最悪の別れ方ですよね。」
富田「でもなんで、指輪まで」
久慈「・・・見せ付けられたんですよ。あの部屋で」
富田「部屋?」
久慈「先輩たちの控え室です。あの・・・薄いピンクのウェディングドレスを見たとき・・・震えてしまいました。」
富田「でも、いくらなんでも、盗むのはよくないよ。」
久慈「・・・すいません」
富田「しょうがないよ。あいつらはもう、あいつらなりの幸せの中だから。こっちがそれをおかすことはできないよ」
久慈「・・・いまさらあやまってもおそいですかね?」
富田「いいよ、・・・なんかの都合でこの部屋に落ちてたってことにしよう」
久慈「え、ほんとですか?」
富田「じゃ、きみのを隠す代わりに・・・別れた原因って何?」
久慈「えっと」
富田「あ、待って。おれもさっき言わなかったから、ためしに、せーので言ってみない?」
久慈「せーのですか」
富田「そうそう。いくよ!せーの」
ふたり「ふたまたされた!」
久慈「!」
富田「!」
久慈「え?富田さんも」
富田「君も?」
久慈「そんな・・・一緒だなんて」
富田「なんか・・・おれたち・・・イイ関係」
久慈「気持ち悪い・・・」
富田「そりゃないだろ!」
久慈「あ、すいません。でも不思議ですね」
富田「不思議だね。おれは別れてから、ふたまたかけられてたのがわかったんだ。たまたま新宿あるいてたら彼女が別の男と歩いてるの目撃して。で、彼女の友達にね聞いてみたら、実は4年前から浮気してたって」
久慈「あたしは別れる一週間前に彼氏が別の女に告白されたらしいんです。それをばかだから告白受けちゃって。で、ケンカです」
富田「そっか。でもまさかおれたちが」
久慈「ふたまたつながりだなんて」
富田「もう!言おうとしたことを横取りするなよ」
久慈「すいません」
富田「そういうとこ、なおしなよ。」
久慈「気をつけます。」
富田「ほんとかな。」
久慈「ほんとです。」
富田「じゃ、歌って」
久慈「それとこれとは別ですよ!」
富田「また失敗だったか」
久慈「友達と三人で歌うんですから」
富田「わかったよ」
久慈「でも、恋愛して、結婚してって幸せですかね」
富田「ま、それも幸せだろうけど、俺たちにはまだまだだなー」
久慈「やっぱ、ビョーキなおさなきゃだめですかねー」
富田「ビョーキねー」
久慈「・・・恋愛なんて怖がることないなんていいますけど、そんなこといったって、ああいう別れ方したなら怖くて当たり前ですよね」
富田「・・・なんとかそのビョーキに勝ちたいと思っても」
久慈「男の子を前にすると」
富田「女の子を前にすると」
ふたり「腰がひけちゃうんだよなー」
   がっくり
   でも息が合ってびっくり

久慈「考えたんですけど、これってマリッジイエローですね」
富田「出たよ、またわけわかんない言葉」
久慈「ほら、マリッジブルーってよくいいますよね。結婚する前にいろいろ不安になるっていうやつ。それよりも前の恋愛する前から不安がっているから、マリッジイエロー」
富田「おかしいよ。結婚って意味だろマリッジって。あとイエローってなんだよ」
久慈「マリッジには結婚以外にも恋愛とか意味あるんです。イエローは注意とか、うかれてるとかそういう意味あるんですよ」
富田「へー、きみやっぱうちの会社辞めて、大検受けて、大学うけてみたら?そこまで今の受験生しらないよ」
久慈「いやです。英語は中学のとき好きで、今でも趣味で勉強してます。」
富田「すごい」
久慈「ほめられました」
富田「素直だろ」
久慈「まぐれですね」
富田「きみはいちいち気に障るよね」
久慈「すいません。」
富田「んーでも、マリッジイエローか・・・イイ言葉だな」
久慈「早く治していい恋愛したいですね」
富田「でも・・・治し方なんて、マリッジイエローによく効くワクチンなんてわかんないよ」
久慈「んー・・・」
富田「幸せ・・・ほしーなー」
久慈「・・・ほしーなー」
   ふたり、
富田「・・・やっぱ、今日、帰ろうかな・・・」
久慈「え」
富田「マリッジイエローの末期症状だ。・・・我慢できない。これから幸せなあいつら見ることになるなんて。耐えらんないよ・・・わるいね。ごめん」
久慈「あ・・・」
  富田、帰ろうとする
久慈「あ、待ってください」
富田「・・・お、ワクチン開発したのかい?」
久慈「お金まだもらってないです」
富田「結局、きみはそういうオチかい?」
久慈「冗談ですよ。ね、出席しましょうよ」
富田「もういいよ」
久慈「単純に考えてください。恋愛をするためにまず自分が幸せになっちゃえばいいんじゃないですか」
富田「・・・」
久慈「富田さん、ものごと難しく考えるもんじゃないってよく言いますけど、ほんとにそうかもしんない
  ですね。目の前ばかり考えてるのは損ですよ」
富田「・・・そうかな」
久慈「そうですよ。あたしたちのしあわせのきっかけとして・・・先輩たちの幸せ、横取りしちゃいましょう。」
富田「そんなのできるわけないよ」
久慈「スピーチでやってやるんですよ!」
富田「またそれかい?」
久慈「もうこうなったら、ひとりひとりで言うのも、めんどくさいんで新郎友人代表、新婦後輩代表連名で書きませんか?」
富田「え」
久慈「そうです。連名で。」
富田「んな非常識なことできるわけないよ」
久慈「非常識でもなんでもいいです。ふたりでおんなじ文章を一斉に読む。考える時間ももうないですし、」
富田「いいよ、うんざりだ。時間ないもくそも、出ないから」
  富田、帰ろうとする
久慈「逃げるのやめましょうよ」
   富田、止まる
久慈「そうです。マリッジイエローから、離れるためには・・・まず逃げるのをやめてからにしませんか。」
富田「・・・逃げてる・・・かな」
久慈「あたしも逃げるとこでした。でもこの披露宴をきっかけに、治しましょうよ。」
   富田、迷う
久慈「なおしたくないわけがない。正直になりましょう。」
   久慈、ペンをとりだして書き始める
   富田、耐えられなくなって、久慈のところにいき
   のぞきこむ
暗転

終章 スピーチ
  舞台にはふたりが立っている
富田「本日は盛島良太君、すずさんご結婚おめでとうございます。」
久慈「おふたりは今、最高の幸せの中にいらっしゃると思いますが、このスピーチをしている私たちは残念ながら少し不幸です。」
富田「お互い彼氏彼女がいませんし、普通の生活もマンネリでつまんないものがあります。」
久慈「ちょっと最近恋愛恐怖症ぎみでして・・・。」
富田「ま、それはおいといて。」
久慈「湿っぽくなりますしね」
富田「幸せってなんなんでしょう?」
久慈「好きになるのも幸せです」
富田「いっぱいものを食べるのも幸せです」
久慈「いろいろあるんですね。」
富田「そこで、ひとつ考えました」
久慈「この場の幸せを少しわけていただけないかと」
富田「具体的には、この披露宴に来ている皆さん全員ひとりづつお話して、幸せのおすそわけをしようと思います」
久慈「ご迷惑かもしれませんが、どうかご協力おねがいいたします」
富田「これは、日ごろ積極的ではない僕たちの荒治療だと思ってください」
久慈「自分たちの幸せは自分で勝ち取ります」
富田「森島君たちだけ独占してたら、しゃくじゃないですか?」
久慈「ま、とにかくおふたり、ご結婚おめでとうございます。
富田「そして、これからのこと、ご協力よろしくおねがいいたします」
富田「新郎友人代表 富田 隆弘」
久慈「新婦後輩代表 久慈 ひろみ」
   ふたり、原稿を天高くあげる
   暗転