2008年5月20日火曜日

32℃

登場人物
成田洋二 池亀サンタ
早島真 きつな
軍司成孝 富士河千之介
小机裕彦 大崎ヒロコージ
スタッフ
作・演出:富士河千之介
舞台: 
照明:RYO
音効:
制作本部チーフ:恭香
情報宣伝:恭香(フライヤー)・富士河千之介(ポスター)
舞台写真撮影:村上史行
舞台製作協力:多賀谷忠生(しもきた空間リバティ)
制作:3man Office制作本部・「32℃~ソコニアルモノ~」パートナーズ

製作総指揮:富士河千之介
序章 Introduction
 テーマ曲、暗転
 明転すると、ステージに男たちが立っている。
 成田、一歩前へ
成田「とてつもなく暑い日の出来事でした」
 軍司、一歩前へ
軍司「窓の外には、いつもとかわらない、平日の東京の昼が見えていた」
 小机、一歩前へ
小机「外を歩いてると汗がどんどん出てきて、乾くことはなかった」
 早島、一歩前へ
早島「履歴書を書いていると暑さでイライラしてきて、字がどんどん下手になっていきました」
成田「七月三十一日、その日の東京の気温は三十二度でした」
 成田、歩く
成田「成田洋二です。恋人と待ち合わせのためにここに入りました」
 軍司、歩く
軍司「軍司成孝。昔の教え子と会うためにここに」
 小机、歩く
小机「小机裕彦。外回りの途中でなんだかやる気がなくなって、アイスコーヒーが飲みたくてね。」
 早島、歩く
早島「早島真です。転職先の面接があって、それまでの時間をつぶすためにここに入りました」
成田「お互いに名前も知らない男たちがこの喫茶店に入りました」
軍司「そこの地名は溜池山王」
小机「気がつきゃおれたち、東京のど真ん中にいたんだ」
早島「ここに来たのは何かの偶然なんでしょうか」
成田「おれは、やっぱり会うべくして会ったとおもいますけどね」
 みんな顔を見合わせる
小机歩き出して
小机「偶然ってやつはだいたいがいやな方向にいくもんだが、ときにおもしろいことになるもんだなって、思ったよ」
軍司「面白いだと?」
小机「面白かったじゃねえか。あのときは」
軍司「面白かった覚えはないんだけどなあ」
早島「僕はいい勉強になったと思います」
小机「そうだ、それそれ」
成田「調子いいなあ」
 早島、歩く
早島「みんなにも夢があるように、僕らにも夢があります。」
軍司「そこにたどりつくまでは苦しくて長い道のりがある」
成田「その道をいやと思わずに歩いてきた人間だけが、そこに行く」
小机「でもみんないやに思っちゃうんだよね」
 成田、歩く
成田「その道を生きていくのが、この国」
軍司「この日ほど、この国を思ったことがない」
小机「おれたちは、その瞬間に戻る」
早島「七月三十一日、東京、溜池山王交差点から南へ五分」
 みんな、それぞれの位置へ
成田「おれはそのとき、コーヒーを飲みながら時計を見ていました」
軍司「おれは、これからその子と会って、なにを話すかばかり考えていた」
小机「おれは、得意先から電話がかかってきていてずっと話していた」
早島「僕は、架空の日本で、だれかを探していた」
 成田、座ってコーヒーを飲む。
 軍司、座って、考える
 小机、電話をし始める
 早島、PCをいじりはじめる
 音楽高まる













第一章 崩壊
暗転中
 大爆音
軍司「だ、大丈夫か!」
成田「痛い!」
軍司「怪我したのか?」
小机「もしもし!もしもーし!」
成田「あ、いや・・・なんとか・・・あ、いたたた・・・」
軍司「待ってろ、今行くから」
小机「くそ、携帯切れやがった・・・」
軍司「ちょっと静かにしてくれ」
小机「ったく(再度発信するが)・・・だめだ、つながらねえ」
成田「痛いし、暗いし、怖いですよ」
軍司「落ち着け!避難訓練で習っただろう」
小机「そんなの、何十年もやってないよ」
軍司「さっき叫んだ人、どこにいる?」
成田「はい」
軍司「どこらへんにいるんだ」
成田「ここです・・・」
軍司「声がちいさくてわからない。」
成田「すいません、(さっきより少し大きめの声で)ここです!」
軍司「わかった、今行く」
 軍司、手探りで歩き始める
成田「こんなときに、だれか明かりを持ってればなあ」
小机「そうだよ、だれかなんかないのか」
軍司「わがまま言うな」
小机「なんだと」
成田「(絶叫!)もうだめだ~!」
 三人、パニック状態
 そのとき、
 パッと懐中電灯の明かり
三人「!」
 三人、静まる
早島「使ってください」
三人「・・・」
早島「ペンライトなんで、寿命短いかもしんないけど」
三人「・・・」
早島「?・・・どうぞ」
小机「あ・・・ああ」
軍司「うん・・・ありがとう」
 成田、早島のところにダッシュでかけより、
 ペンライトをとる
成田「(腰低く)ありがとうございます!」
早島「かまわないです」
成田「よく持ってらしたんですね」
早島「たまたまです」
成田「でもすごいですよ」
早島「仕事で、よく使うんで」
小机「ふん、なんの仕事なんだかな・・・」
成田「ちょっと、やめましょうよ(ライトをふる)」
小机「!(ライト当てられて)、まぶしいよ」
成田「あ、すいません」
軍司「そうだよ、命の恩人になるかもしれないんだぞ」
小机「あーそうかいそうかい!、ところで、あんた?」
成田「はい?」
小机「どこが、痛いんだ?」
成田「!・・・ああ、足が・・・さっきまでは痛かったんだけど・・・」
小机「ふん、人騒がせな奴だ」
軍司「おい!まずは誰かと連絡をとってみよう」
 そのときやっと光がつく
 でも暗め。
 四人、少し、ほっとする
成田「ちょっとは、楽になりましたね」
小机「タイミングいいんだか悪いんだかな・・・」
 三人、携帯を使って話し始める
成田「(携帯がつながり)あ、もしもし!大丈夫か!・・・生きてるかい・・・」
軍司「(こちらも携帯がつながり)あ、軍司です。そっちはどうだ・・・」
小机「あ、さっきはごめんね!あのさ・・・」
 三人いっせいに話し始める
しかし
小机「(話してて突然)おい!もしもし!もしもーし!」
成田「!・・・切れた」
 成田、携帯をおもいきりふる
軍司「ああ!こっちもだ」
 軍司も憎憎しげに携帯を見つめるj
早島「みんないっせいに使ってるから、回線がパンクしたのかもしれません」
軍司「くそ!」
成田「(携帯を見つめて)大丈夫かな・・・」
小机「ん?」
成田「!・・・なんでも(ありません)」
小机「女?」
成田「あ、いや・・・」
小机「こんな昼日中からいいご身分だな」
軍司「なあ、からむのやめてくれよ」
小机「からんでなんかいない。ただ聞いただけだ」
軍司「別に人がなんの目的でここにいたとしてもあんたの人生には関係ないだろう」
小机「んだよ、説教臭いな」
軍司「悪かったな」
成田「ああ、けんかしないでください」
小机「・・・」
軍司「・・・そうだな。」
小机「それよりも、今どうするかだ」
成田「あの、ちょっと下に下りてみます」
小机「どうせぐちゃぐちゃになってるだけだろう」
成田「そうでしょうけど・・・ここから早く外に出ないことには・・・」
軍司「おれもおりよう」
成田「おれだけで大丈夫です」
軍司「?」
成田「もし、おれたちみたいに生きてる人がいたら、店員さんとかいたら、助けを求めてみます」
軍司「・・・そうだな。」
成田「行ってきます」
 成田、はけようとする
小机「(成田の背中に向かって)逃げるなよ」
成田「!」
小机「もし外に出られたとしても、おれたちを置いてくんじゃねえぞ」
成田「・・・そんなことしません」
 成田、はける
小机「ふん・・・」
軍司「他人を信用できないのは・・・なにかあったからかな?」
小机「昔からこうなもんで」
軍司「昔から?」
小机「・・・どうでもいいだろう。おれの昔なんて」
早島「まずは、彼を待ちましょう」
軍司「そうだな。その間にだれかリーダーを決めたほうがいいと思う」
小机「なるほど」
軍司「リーダーを決めて俺たちの統率を図って、救助を求めよう」
小机「(挙手)」
軍司「?」
小机「おれの出番ってこったな」
軍司「あんたが?」
小机「このメンバーの中ではおれがリーダーに一番ふさわしい」
早島「自信がありますね」
小机「なんてったって、うちの会社の営業部ナンバーワンだぜ!そんな男がここにいるだけ、おれに感謝しろってもんだ」
軍司「んー」
小机「ご不満?」
軍司「こんな危機的状況に、営業力って必要なのか?」
小机「営業ってのは、相手と自分をコントロールする力、対外交渉力、そして情報戦略、マーケティング力、そしてリーダーシップ。すべての要素がないとおれみたいにトップを取り続けることができないんだ」
軍司「ほう」
小机「こういう追い込まれたときこそ、おれみたいな社会の歯車のひとつが統率しないとますます、危機的状況にはまりこむぞ。」
軍司「ただやってみたいってだけじゃないんだな」
小机「おれを使え!」
軍司「・・・」
早島「あの」
軍司「?」
早島「僕は、おります」
小机「え」
軍司「あんたもリーダー決めに参加してくれよ」
早島「いえ、そんなことに時間とられるより」
小机「そんなこと?」
早島「僕のこれ(PCのこと)使ってみなさんをサポートしてるほうが気が楽ですから」
軍司「そうか・・・」
早島「携帯の電波はパンクしてるみたいだけど、ネットの回線はまだマシなほうなんで。」
小机「PHSだろ?もうすぐそっちもオシャカだ」
軍司「そうだ。もっと他の手段使って情報収集をしていかないと」
早島「パンクまでに僕の知ってる手段全部使って最新の情報を集めますから」
小机「そんな流暢なこといってられっかって」
早島「待ってください!」
ふたり「!」
早島「ここから出られないってことになったらどうするんです?」
小机「・・・」
早島「携帯も、公衆電話も、なんにも使えないんですよ。」
小机「(ため息)・・・おもちゃに頼りすぎるやつは困る」
早島「もうすこしすればネットの力を大いに思い知るときが来ますよ」
小机「ふん・・・」
軍司「わかった。なにか少しでも情報が入ったなら、いつでも教えてくれ」
軍司「まかせてください」
小机「ま、いいか。こんな危機的状況の中で敵前逃亡するやつにおれたちの命を預けたくないからな」
早島「・・・」
軍司「でも、もうひとり含めて、争ったほうがいいんじゃないかね?」
 小机、後ろを見る
 そこには成田が憔悴しきった顔でいた
小机「(舌打ち)・・・逃げなかったか」
成田「・・・逃げられる状況じゃないです・・・」
軍司「下は?」
成田「棚とか、ガラスとか・・・ここ以上にひどいです・・・」
小机「店員は?」
成田「どこにも姿が見えませんでした。まっくらだったのもあるけど・・・おれが何回よんでも返事がなかった」
軍司「全滅か」
成田「あとドアなんですけど」
小机「出られるのか!」
成田「(首を大きく横にふる)」
軍司「(ため息)」
成田「そこの通りに出られるところは全部ガラスなんです。ガラスが割れてるだけだったら出られるんですが・・・さらに店の入り口全部に車が横倒しになっていて・・・」
ふたり「(愕然)」
成田「まるでこの店をフタしてるみたいなんです。それと・・・・」
小机「?」
成田「ガラスが・・・ハリネズミみたいに体中に突き刺さってる人が・・・目を開けたままこっちをにらんでました・・・」
小机「!」
軍司「・・・」
成田「・・・以上です・・・」
 成田、座り込んでしまう
軍司「そうか・・・でも良く見てきた・・・」
成田「・・・」
小机「おいおいおいおい先生。さっきから軽く仕切ってるけどそれってフライングってやつじゃないの?」
軍司「わかった。」
成田「なにをするんですか?」
小机「俺たちが生きるか死ぬかの選択だ」
軍司「公平にじゃんけんで・・・」
二人、それぞれに構える
二人「最初はグー!じゃんけん、ぽい!」
 あいこ
二人「あいこで、しょ!」
 あいこ
二人「んー、あいこで、しょ!」
 勝負つく
小机「やった!おれの勝ちだ!」
 そのとき
早島「これは・・・!」
小机「(喜びから一転)なんだなんだなんだ!おれがリーダーなのがそんなに不満なのか?」
成田「リーダー?」
早島「(かまわず)やはり・・・僕らはとんでもない時代に突入したのかもしれません」
軍司「どうした?」
 軍司、早島の机にかけよる
 そして画面を見て絶句する。
 それを見て成田
成田「ど、どうしたんですか?」
軍司「・・・」
小机「もったいぶりやがって、なんなんだよ!」
 小机も早島のところに行く
 そして画面を見て
小机「え・・・」
成田「どうしたんですか?
小机「日本が・・・」
成田「日本が・・・?」
軍司「機能・・・できてない」
暗転










第二章 葛藤
 暗転中
 ラジオの声が聞こえる
 ラジオ「繰り返しお伝えいたします。本日、十四時四十五分ころ、いまだに判明しておりませんが、戦闘爆撃機による東京都内および、全国各地に爆撃がありました。主な被害は以下のとおりです。
     千代田区永田町一丁目、二丁目周辺。この中には首相官邸、国会議事堂などがふくまれます。同じく、千代田区霞ヶ関一丁目、二丁目周辺。この中には警視庁、警察庁をはじめとする各官庁がふくまれます。新宿区市谷本村町周辺。陸上自衛隊市谷駐屯地周辺です。同じく新宿区西新宿周辺。東京都庁などが含まれます。都内各地域の被害はきわめて甚大であり、政府、防衛庁、警察および消防とも対応に追われてる最中と思われます。
また全国各地でも爆撃が確認されております。被災地は以下の通りです。北海道札幌市、青森県・・・」
 明転
 場内には四人が、ぐったりした格好でラジオを聞いている
小机「ラジオまで持ってるなんて」
軍司「不幸中の幸いだ」
早島「お役に立ててうれしいです」
小机「あんた、いったい、なにもんだ?」
早島「(小机を一瞥してすぐにPCに熱中)」
 無視された小机、立ち上がって、自分の机においてあったコーヒーを飲もうとする
 しかし、中には氷が溶けた水だけだった
小机「(舌打ち)(そのあと気を取り直して)しっかし、爆撃だとかきいてるぶんで気持ではわかるんだけど、どうも実感がわかないな」
成田「僕は・・・なんとなく・・・」
小机「あんたはなんでもわかるんだな」
成田「・・・そこの階段下りればいやでもわかりますよ」
小机「ふん・・・」
早島「よしきた!」
成田「どうしたんですか?」
早島「災害用掲示板とチャットにアクセスできました。」
成田「そこに書き込んだりしたらs助かるんですか!」
早島「書き込むだけじゃ薄いんです」
軍司「そんな・・・」
早島「みんな僕らと同じこと考えてますからね。」
小机「どうすんだよ」
早島「できるだけ、警察とか救急とかにパイプを持ってる人をチャットで探して助けを呼んだほうが早い」
軍司「でも、警察とかも救助でどこも忙しいだろう?ネットを見る人なんかいるのか」
早島「阪神大震災とか去年の新潟のときに掲示板使って救助を求めた例がありました。」
小机「ふん」
早島「使わない手はないでしょう」
軍司「・・・」
早島「お!」
軍司「どうした?」
早島「ビンゴ!」
成田「え?」
早島「見てください」
成田、早島のPCにかけよる
成田「『あたしは・・・総理大臣の娘です』!?」
小机「んな馬鹿な」
早島「チャットの中でひとりだけ浮いてる人がいて、おもしろそうだったんでずっと話しかけてみたんです。そしたら自分は総理の娘だと」
成田「(画面を見て)『あたしは総理の娘です・・・公邸の部屋に閉じ込められてます』って・・・」
軍司「(早島のPCにかけよって)本当なのか?」
小机「け!総理に娘なんかいるかよ!独身だぞ」
軍司「(画面を見ながら悩む)いたずらの可能性は?」
早島「いたずらの割には総理官邸のこととか、新しくなったばっかりの品川の公邸のこと、部屋の数とかお手伝いは何人いてとか・・・詳しすぎるんです」
成田「(画面を見ながら)『あたしを信じる人はどんどんカラもうよ!』」
軍司「うーん・・・」
成田「どうなんでしょうか・・・」
小机「おいおいおいおい、おまえらおまえらおまえら」
 小机、あきれながら
小机「ネットなんてよ、みんな仮面かぶってしゃべった日にゃ、どんな馬の骨だって有名人になれるんだ。」
成田「馬の骨だなんて」
小机「ああ、何回でも言ってやるよ、馬の骨、馬の骨」
軍司「おい」
小机「有名人のふりして、だまして、陥れて、優越感を得る。近頃の負け犬どもの常套手段だ。」
早島「僕は、信じてもいいと思います」
軍司「(悩む)」
成田「僕も・・・こういう状況だし、デマでもなんでもいいから少しでも外と連絡とっといたほうが、なにかと便利な気がします」
小机「バカか!デマなら助からねえかもしれないんだぞ」
成田「そうですけど・・・・」
小机「知った顔してしゃべってんじゃねえぞ」
軍司「続けてみよう」
小机「おい!」
早島「はい!」
 早島さがる
小机「ったく、どいつもこいつも・・・」
軍司「でもネットを信じるだけじゃだめだ」
成田「?」
軍司「下がだめなら、上に行ってみよう」
小机「!」
軍司「たしかここは二階建ての喫茶店のはずだ」
成田「上に行ってどうするんですか」
軍司「おれたちのほうでも助けをよぶことを考えよう」
成田「行きます!」
 軍司、成田、はけようとする
小机「(絶叫)ちょっと待て!」
 ふたり、待つ
小机「誰が・・・誰が、そんな指示出した?」
成田「誰がって・・・」
小机「リーダーって誰なんだ?」
軍司「!」
成田「それは・・・」
小机「え?」
成田「(手で小机を指す)」
小机「(ほっとしてイヤミ)よかった。死体見たショックで、頭まで死体並みになっちまったかと思ったよ」
軍司「おい!」
小机「失礼」
成田「リーダーならもっとリーダーらしく(しっかりしてください)」
小机「下は黙ってろ!」
成田「!」
軍司「これは急を要する。」
小机「(かまわずに)ひとつ決め事をしよう」
軍司「人の話を聞け!」
小机「おれに意見があるときは・・・挙手して意見すること」
軍司「あんた・・・」
小机「先生、あんたは確かに俺なんかより年上っぽい。そのぶん人生経験豊富なんだろうし、おれの知らないことまで知ってるかもしれない。常識的に言えば年上のあんたがリーダーしておれらをひっぱってくれるってのが普通なんだろうが・・・。」
成田「・・・」
小机「じゃんけんでリーダー決めるっつったのは、あんただよ」
軍司「!」
小机「多数決を否定する、おつもり?」
軍司「しかし」
小机「(かまわずに)負けた以上はおれの指示に従ってくんねえと」
成田「それはそうですけど」
小机「あんたも立派な社会人だろ?社会人なら自分の言った以上は責任持てって教えられたよな。」
成田「・・・」
軍司「わかった。」:
 軍司、ゆっくり挙手する
小机「あんた仕事は?」
軍司「・・・そんなの関係ないだろう」
小机「いいから!」
軍司「三月まで、子供たちに絵を教えてた」
成田「先生だったんですか」
軍司「・・・ああ」
小机「ふん、おもしろいね、学校の先生が手を上げてるよ」
軍司「(屈辱)」
小机「おれは小机だ。今からは小机リーダーと呼べ!もちろん俺に対してはそれなりの口の聞き方じゃない限り、おれはあんたらの意見に聞く耳はもたねえかならな。」
軍司「(手を上げたまま)」
小机「はい、あんた」
軍司「せめて・・・せめて、おれも名前で言え」
小机「はい?」
軍司「おれは軍司だ。」
小机「軍司。はい、軍司君」
軍司「(手をぴっと降ろし)小机リーダー、私は大至急、このビルの屋上にのぼり、助けを求めるための方法をとるべきであると思います」
小机「ほう、方法とは?」
軍司「発炎筒があれば発炎筒でのろしをあげます。ないのであれば、もえやすいものをもちよって、焚き火を行い、外部にわれわれがいるのを知らせるのはどうでしょうか?」
小机「具体的でよろしい」
軍司「・・・ありがとうございます」
小机「やればできるじゃないか」
軍司「・・・」
小机「そこの君」
成田「?」
小机「名前は」
成田「成田です・・・」
小机「よし、今からキリマンジャロ作戦を行う。」
成田「キリマンジャロ?」
小机「この前の湾岸戦争のときにアメリカ軍が作戦に名前つけてただろ?だから俺たちもだ」
軍司「キリマンジャロとはなんでしょうか?」
小机「俺がさっき飲んでたコーヒーがキリマンジャロブレンドとか言うやつだったからね」
成田「・・・そんなことですか」
小机「おれに意見があるやつは挙手して(言え)!」
成田「失礼しました!」
小机「成田、お前もこの軍司くんといっしょに屋上に行って、作戦を完全遂行してこい」
成田「・・・はい」
小机「声が小さい」
成田「はい!」
小机「よし!行って来い」
 ふたり、小机をにらみながら、はける
小机「状況は逐一、降りてきてすぐに報告しろ!必ずだ!ホウレンソウだ!ホウレンソウは確実にしろ!」
ふたり「・・・はい!」
小机「上司の指示なき行動をしたものは・・・処罰する」
ふたり「・・・」
小机「わかったか!」
ふたり「はい!」
小机「いざ、出発!」
 ふたり、苦虫をかみつぶしたような顔をしてはけていく
 残ったのは小机とずっと座り続けている早島
早島「(ずっと小机を見てる)」
小机「(その視線に気づき)・・・なんだ?」
早島「(PCを見る)」
小机「あんた」
早島「(PCから顔を上げる)」
小机「名前は?」
早島「早島です」
小机「早島、なにか情報は入っているか?」
早島「チャットはJAVAの調子が悪いんで今は切ってます。」
小机「切った?」
早島「ええ」
小机「総理の娘と話せんじゃないか」
早島「メールもありますから」
小机「ふん、とことん、信じてるんだな」
早島「どこかの国が日本を攻撃してきた今、同じ日本人同士信じなくてどうするんですか?」
小机「ふん・・・」
早島「(PCを操作)」
小机「あれかな・・・三十八度線あたりが仕掛けてきたんかなー?」
早島「・・・それは・・・なんとも」
小机「ぼんやりしてるなあ」
早島「(再びPCを操作)」
小机「(早島のところに近寄り)なあ、あの先生みたいに、たまにははっきり言ってくれよ」
早島「(PCを操作)」
小机「(机を手で強くたたく)」
早島「(小机を見上げる)」
小机「リーダーに向かっていい態度だな」
早島「最初に言いましたよね?僕は情報収集係だと」
小机「総理の娘とかいうオタク野郎とおしゃべりしてるだけだろうが!」
早島「そんなんじゃない!」
小机「立派な、きんたま二つ、しっかりぶら下げて、画面の向こうで腹をぼりぼり書いてる奴なんだって」
早島「ではお聞きしますが」
小机「おれに意見があるときは(挙手して言え)」
早島「(かぶせる)ここはいつから軍隊になったんですか?」
小机「(ため息)・・・まったくもって不愉快になるなあ、あんたは」
早島「・・・」
小机「わかんねえのか!緊急事態なんだ。こういうときは軍隊式のしっかりした組織にすることで、おれたちは生き残れる」
早島「わからない」
小机「は?」
早島「わかりません」
小机「(舌打ち)」
早島「あなたは、リーダーのその立場に酔っているだけだ」
小机「!」
早島「酔っ払いです、ただの」
小机「・・・」
早島「人の上に立つことは確かに快感かもしれません。人を思うままに操って、自分の目標にむかってうまい具合にコマを動かせばいいですからね。」
小机「・・・」
早島「でも、そんなリーダーが単なるナルシストなら、その下のコマは死ぬ。」
小机「・・・」
早島「ほんものの軍隊ならコマの補充はきくかもしれません。が、しかしここはぼくら四人しかいない」
小机「うるさい!」
早島「補充がきかない中で、あなたはどうやって生き残るんですか?」
小机「黙れ!」
 小机、つかみかかろうとする
 そのとき
 メールの着信音
 小机、出鼻をくじかれる
小机「(くやしい)」
早島「メールですねえ。楽しみだなあ」
 早島、操作する
早島「『こん~! がんばってますか?チャット、切れちゃってつらいですね。でもつながったら返事ください。ずっと・・・待ってます』」
小机「・・・」
 小机、早島の肩に手を置く
小机「(怒ると思わせておいてにやりとわらう)」
早島「?」
小机「レス書けよ」
早島「・・・」
小机「早く!」
早島「(目をまっすぐ見て立ち上がる)」
小机「レスを書け!」
早島「書きません!」
小机「なぜだ」
早島「これを見てください」
 早島、PCを見せる
早島「ダウンしました」
小机「・・・」
早島「ちょっと下に下りてみようと思います」
小机「許可なく勝手に動くな!」
早島「僕も、死体を見て、頭を死体並みにしようと思います」
 早島、はけ口まで歩く
小机「お前!」
早島「僕はあなた都合のいいコマではない。」
 早島ははける
 小机、それを見送った後、
 自分の席に戻る
 水だけになったコーヒーの入れ物をじっと見つめる
そしておもいきり、くずかごにぶち込む
 暗転


 

















一方、こちらは屋上に向かった成田と軍司
 屋上はうだるような暑さだった。
 そして・・・
成田「(屋上から外を見て)・・・な、なんだ、これは・・・」
軍司「・・・」
成田「ここは・・・東京・・・ですよね・・・」
軍司「・・・ああ」
成田「東京・・・」
軍司「間違いない・・・ここは東京だ・・・」
成田、がっくりひざまづく
 軍司、ふらつく成田を抱える
軍司「おい!」
成田「先生」
軍司「なんだ」
成田「・・・どうなるんでしょうか」
軍司「・・・」
成田「これから・・・どうなっちゃうんだろう・・・」
軍司「・・・」
成田「こんな・・・こんな映画の中の景色みたいなところで・・・生きていけると・・・思いますか?」
  軍司、成田の肩を持ちながら
軍司「おい、いいか!気をしっかり持て!」
成田「・・・」
軍司「おい!」
成田「・・・タフですよね?」
軍司「え」
成田「先生は・・・こういう状況でも・・・気を強くもてるなんて」
軍司「・・・」
成田「先生ってタフじゃなきゃやってられないんだろうな・・・」
軍司「・・・」
成田「おれなんか・・・」
軍司「馬鹿野郎!」
 軍司、成田の襟首をつかんで強くゆする
軍司「生きてるじゃないか!おれたちはまだ生きてんだ!」
成田「・・・」
軍司「(かまわず)おれたちがしっかりしなきゃ、だれが助けてくれるんだ!」
成田「・・・あの」
軍司「おい!がんばろうや!おれたちでなんとかしようや!」
成田「あの!」
軍司「なんだ!」
成田「苦しい・・・です!」
軍司「!(襟首離す)」
成田「(息切れ)」
軍司「・・・す、すまん。つい・・・」
成田「でも・・・似合ってますね」
軍司「ん?」
成田「体育会系のクラブの顧問とかしてましたよね?」
軍司「いや」
成田「正直に言ってくださいよ。バレーボール?バスケかな」
軍司「あの」
成田「サッカーですか?」
軍司「聞いてくれ」
成田「え」
軍司「美術部」
成田「へ?」
軍司「美術部だ。それも女子高の。」
成田「・・・」
軍司「?・・・なんだよ、がっかりか?」
成田「あ、いえ・・・」
軍司「こ、これでも関東大会で三年連続優勝とかしてんだぞ」
成田「すごい!」
軍司「まあな」
成田「なんで文化部なのにそんなにタフなんですか?」
軍司「じゃあ逆に聞くが、文化部がタフだったら悪いのか?」
成田「それは・・」
軍司「・・・人間、夢中になれるものがあればなんだっていいんだ。夢中になることが、人間をタフにしていく・・・」
成田「・・・」
軍司「でも夢中になりすぎるのは・・・場合によっては・・・よくないけどな」
成田「え?」
軍司「なりすぎは・・・よかないな」
成田「・・・」
軍司「うん、よくない・・・」
成田「・・・」
軍司「今日、昔の教え子に会うことになっててな」
成田「同窓会とか?」
軍司「いや・・・あやまるつもりだったんだ」
成田「!」
軍司「そいつの・・・将来の筆を・・・おれが折ってしまったんだ」」
成田「!」
軍司「三年連続、高校文化祭で優勝した次の年。優勝とってしまったせいでまわりから過剰な期待をされてしまったんだ。四年目ももちろんですよねとかな。」
成田「・・・」
軍司「先生仲間から言われるならともかく教頭や校長、はては理事長までが、週に五回はおれのところにやってきて、『力強い励ましのお言葉』ってやつをもらったよ。あきるくらいにね・・・。作品を作るのはおれじゃない。生徒だ。なのに、おれのところに・・・。」
成田「・・・」
軍司「お言葉って不思議なもんでな、言われれば言われるほど、そのとおりになっちまうんだよ。だんだんおれは芸術を楽しんで若いやつらに伝える、広げるっていう精神から、ただ単に、自分の・・・いや、学校の看板を守るための手段として芸術を量産させる方向に歩くようになっちまった。賞をもらうことだけを考えて生徒に教えて、作らせる」
成田「・・・」
軍司「そしてひとりの作品をこわしてしまった」
成田「・・・」
軍司「そのまんまでもいい作品だったのを、おれの狂った審美眼が、この手が、審査員にうけるように・・・ひとりの生徒の絵を・・・作り変えてしまった・・・」
成田「・・・」
軍司「絵が本当にうまくて・・・素人が見てもそいつの作品はすばらしいって思えるほど才能をもってるやつだった。絵だけじゃなくて、彫刻も、版画もなんでもそいつの作る作品は見る人の足を釘付けにさせた。でも・・・それは勝つための芸術じゃなかったんだ。いや、そいつひとりでも勝てる作品だったのかもしれないけど、おれの頭にはそうは思えなかった。文化祭に提出する絵を見たとき、うまいことはうまいんだけど、これじゃ勝てないって思えてしまって・・・夜中に筆を入れてしまった・・・」
成田「・・・」
軍司「文化祭の会場に飾った絵を初めて見たときのそいつの顔を、おれはずっと忘れることができない。目をおもいっきり開いて・・・それまでおれを信頼して作品を作り続けてきたのに裏切られたんだからな・・・。おれをずっとにらんでから会場から出て行った。」
成田「・・・」
軍司「今年のはじめに、改作がバレて・・・先生やめた。」
成田「・・・」
軍司「四月からずっとおれはあやまりの行脚に出た。改作したやつみんなに会って、謝って・・・今日のそいつが最後のひとりだったんだ」
成田「会ったら、最初になんて声をかけますか?」
軍司「なんだろうな・・・『元気か』とか言っちゃうんだろうな・・・」
成田「・・・それでも・・・おれはいいと思います」
軍司「・・・」
成田「その子も、少しは年くって、大人になってますよね。」
軍司「・・・」
成田「年がたって、正しいことだけがまかり通る社会ってもんじゃないって気づいてるなら、先生のことすこしはわかってくれるんじゃないかなあ」
軍司「・・・」
成田「ずっと子供のままのきれいな心をもってる子なら、別ですけど」
軍司「・・・どっちが正しいんだろうな」
成田「どっちも正しいですよ」
軍司「どっちも?」
成田「ええ。おれは人に最初から悪い心を持ってる人なんていないって思います」
軍司「性善説か」
成田「おれはそう思います」
軍司「・・・」
成田「すいません。先生前にして、説教しちゃいましたかね?」
軍司「別に」
成田「すいません。あ、今度はおれのこと話しましょうか」
軍司「え」
成田「おれも今日ここに来たのは、彼女にプロポーズするためなんです」
軍司「!」
成田「三年つきあったから、時間もたって、お互いそれぞれわかってきたから、いやなとこもあるけど、それを他のところがカバーしてくれて・・・だから今日、言おうと思ったんです」
軍司「そうか・・・」
成田「今頃どうなってるんだろう。」
軍司「・・・」
成田「生きているかな・・・」
軍司「!」
成田「会えるかな・・・」
軍司「・・・生きているさ」
成田「!」
軍司「思うんだ。無理やりでもいい。想像でもかまわない。」
成田「思う・・・」
軍司「確証がなくとも、ずっと心で、片隅でも、ちょっとした時間でも、思えば必ず、それはかなう・・・」
成田「軍司さん・・・」
 そのとき
小机「きもちいいもんだな」
ふたり「!」
ふたり、振り返る
小机、怒りの顔でこちらを見ている
小机「戦場のひなたぼっこは楽しいか?」
成田「違います」
小机「来ねえ来ねえと思ってたら、これだもんな」
成田「そういうことじゃない」
 むきになって反論する
 軍司、やわらかく成田を抑えながら
軍司「小机リーダー」
小机「なんだね」
軍司「申し訳ございません。成田君と話をしてしまいました」
 小机、軍司のところにやってきて
小机「軍司君の言う、助けをよぶ準備は?」
軍司「いえ・・・」
小机「これじゃ、いつまでたってもおれたちは助からないかもしれないなあ」
軍司「申し訳ございません」
成田「軍司さん」
軍司「いいんだ。おれが悪いんだから」
成田「でも」
小机「なんだ、成田、お前、リーダーに文句あるのか?」
成田「・・・」
小机「手を上げて、もっとはっきり言え」
成田「・・・」
小机「負け犬みたいな顔しやがって」
成田「!」
軍司「(手を上げる)」
小机「なんだ」
軍司「(上げた手を押さえる)・・・私のせいで、助けを呼ぶ作戦が遅れてしまいました。早速今から挽回しようと思います。」
小机「信じられないな」
軍司「まずは・・・」
小机「まずは?」
軍司「・・・あなたに・・・リーダーを辞めていただきます」
小机「!」
成田「軍司さん!」
軍司「(小机をじっと見やる)」
小机「な・・・なんだと」
軍司「部下の信頼や、行動に対するモチベーションを下げるような上はいらないということです」
小机「きさま・・・」
軍司「成田君」
成田「はい?」
軍司「この人を・・・拘束しなさい」
成田「!」
小机「笑わせるな!」
 小机、軍司の襟をつかむ
小机「じゃんけんで勝ったやつがリーダーできるって決めたじゃないか。お前はそれを    
  それを崩すつもりなのか?」
軍司「ええ」
小机「ふざけやがって・・・」
 小机、軍司を殴ろうと手を上げようとする
 しかしあがらない
 見ると、成田が小机の手を必死で押さえてる
小机「!」
成田「(軍司に)いいんですよね?」
小机「成田!」
成田「(軍司に)これでいいんですよね?」
軍司「・・・ああ」
小机「お前ら!」
軍司「あんたが上に立つかぎりおそらく!・・・おれたちは生き残ることはできない」
小机「この野郎!」
軍司「勝ち負けで、生き死には、判断されるもんじゃない」
小机「・・・」
軍司「絶対生きてここから出てやる!約束する」
小机「・・・」
成田「・・・」
 軍司、成田と同じ後ろに立ち、小机を手を受け取る
小机「いてえ!」
軍司「(成田に)先に下戻って、なにか情報が入ってるかどうか聞いといてくれ」
成田「でも」
軍司「大丈夫だ」
小机「おれが大丈夫じゃねえぞ」
軍司「成田君」
成田「はい?」
軍司「きみたちは結ばれるべきだ」
成田「・・・」
軍司「(成田に)急いで!」
成田「は、はい!」
 成田、はける
小机「結ばれる・・・って?」
軍司「さあな」
小机「え?」
軍司「仕事に生きがいを感じてるだけなら、いつまでたってもわからないさ」
二人はける
  暗転


 
明転
 薄明かりの中、早島が入ってくる。
 ゆっくり歩いて、自分の席に行く。
 PCをあけ、ゆっくり作業する早島
 しかし
 集中できない
 乱雑にキーを打つが、落ち着かない
 いすから立ち、転がってるいすを直してそこに座りなおす
そこに成田がやってくる
成田「戻りました」
早島「お帰りなさい」
成田「どうですか?」
早島「・・・サポートも・・・きびしいもんですね」
成田「(安堵)そうですか」
 成田ほっとしてに自分のテーブルにあるコーヒーを飲む
早島「なんか、あの人みたいですよ」
成田「あの人?」
早島「ナルシストでありエゴイストな人」
成田「エゴイスト・・・(小机を思い出して)ああ、なるほど」
 成田、あわててコップを置く
 早島、それを見て微笑む
成田「あの・・・」
早島「早島です」
成田「あ、失礼しました。早島さん」
早島「はい」
成田「もうすぐ、面白いことがありますよ」
早島「え」
成田「お楽しみに」
 成田、階段のほうへ行く
早島「軍司さんとかは」
成田「すぐ来るとは思うんですけど」
早島
早島「待ちましょう」
 成田、早島のところへ
成田「総理の娘さんは・・・」
早島「見ますか?」
 早島、PCを軍司に見えやすいようにする
成田「(画面を見て)・・・すごい・・・」
早島「これは災害掲示板です。」
成田「彼女自身も大変なんでしょうね」
早島「それならこのレスを・・・」
 早島、PCを操作
 メール画面を出す
成田「『あたしはどうでもいいから。みんなが助かってくれればそれであたしは満足するんだ』」
早島「まだ十七歳なのに」
成田「しっかりしてるもんですね」
早島「ええ」
成田「ほんもの・・・ですよね」
早島「ほんものです」
成田「俺たちのことも、話したんですか?」
早島「(PCを操作)ええ。」
成田「助かったら、今度は僕らが彼女を助けに行きましょう」
早島「そうですね」
 早島、PCを打つ
成田「でもパソコンちゃかちゃか打てる人ってかっこいいなあ」
早島「格好だけですか?」
成田「あ、いや、そんなつもりじゃなくて」
早島「いいんですよ」
成田「いつかおれにもパソコン教えてください」
早島「僕もまだまだ勉強中です」
成田「そんなしなくとも(いいじゃないですか)」
早島「いいえ、パソコンの世界は一日ずつ・・・あ、一時間、いや一分ぐらいの速さでどんどん進化してるんです。」
成田「そんなに?」
早島「ええ。ハードは世界中の会社が新製品を続々と発表する。ソフトも日々アップデートしていく。それを侵すウィルスも生まれるし、防御するワクチンも開発される。そのスピードってのは、普通に僕らが生きている世界の何倍もの速さなんです。」
成田「まさに、光の速さ?」
早島「そうですね。それに近い」
成田「すごい!」
早島「僕はそのくらいのスピードが好きですね。今の世の中に退屈してるから」
成田「なんか話すことまでかっこいいな」
早島「照れますね」
成田「(笑う)」
早島「(笑う)」
成田「あー、なんかけっこう初めて見たときより人間っぽいからびっくりしました」
早島「人間っぽい」
成田「そう。なんかクールじゃないですか。パソコンかちゃかちゃいじって的確に情報を僕らに提供してて。うわ、かっこよすぎて近寄りがたいなーって」
早島「僕はどっちかといえばぼんやり型ですよ」
成田「見えない見えない」
早島「夢ばっかり見てる男ですよ」
成田「夢ですか」
早島「僕の力で世の中におもしろいこと起こすんです」
成田「でかいなあ」
早島「それ以上は、いえないですね」
成田「気になります」
早島「助かったら話しましょう」
成田「約束ですよ」
早島「ええ」
 ふたり硬い握手
成田「男の約束」
早島「もちろん」
 そのとき
小机「離せ!馬鹿野郎ども!」
 早島、あわてて、自分の席に戻る
 はけ口から小机、軍司が戻ってくる
軍司「帰ったよ!」
早島「お、お帰りなさい」
軍司「こいつは、いすに縛り付けとこう」
成田「はい!」
早島「なにがあったんですか?」
小机「おい!おれはあくまでも生き残るためにリーダーしただけだぞ!」
 成田、裏からガムテープのようなものを持ってくる
 軍司とふたりでいすに小机を座らせると、後ろ手に縛る
小机「どっからそんなもの見つけた!」
成田「さっきです(縛る)」
小机「まるで人質じゃねえか」
軍司「うるさい!」
小机「!」
軍司「(早島に)ひとつ伝えたいことがある」
早島「なんでしょうか」
軍司「ついさっきから、リーダーはおれになった」
早島「・・・」
軍司「これからはおれのもと、協力してほしい」
早島「・・・わかりました」
成田「どこが爆撃したのかとかわかりましたか?」
早島「情報が錯綜してますが、少なくとも、自衛隊の誤爆とかシュミレーションではないと・・・」
成田「外国の攻撃ということですか・・・」
軍司「さっき言った総理の娘に助けを求めてある」
成田「やりましたね!」
小机「おいあほども!」
三人「(ふりかえる)」
小机「負け犬同士信じて、だまされまくりってか!」
軍司「おまえなあ」
小机「先生よ、あんた証拠を見たのか?」
軍司「証拠?」
小机「そいつが本当に正真正銘の総理の娘っていう証拠だよ」
軍司「そんなの、さっきから画面見ればわかるだろう」
小机「そんなんじゃ信じられねえな」
成田「過去ログとかどうですか?」
軍司「え」
成田「そのチャットの過去に話した分を記録してるものがあるんです」
早島「それなら調べました。すでに僕ら以外の人で都内の各地で生き埋めとか閉じ込められた人がいっぱいいるんだけど、その人たちがお願いしたらすぐに警察とか急行させて、助けてます。感謝のレスとか応援がぞくぞくと届いてるんですよ」
成田「信頼できますね」
小机「あほ!ログなんてな、あとからごまかすことなんていくらでもできる。」
軍司「・・・」
小机「だますほうはおれたちよりもっと優秀なんだぞ。」
軍司「(迷う)」
早島「救助が僕らを見つけてくれるのを待ちましょう」
成田「・・・」
軍司「・・・」
小机「どうするんだ?」
早島「お願いします」
小机「だまされるのか?」
軍司「・・・このまま・・・続けてくれ」
早島「わかりました」
 早島、席にむかう
小机「あきれたよ!」
軍司「なんだと」
小机「あきれた!大いにあんたらにはあきれたよ!」
軍司「言葉を慎め!」
小机「!」
軍司「挙手して発言しろ」
小机「(自分の手が縛られていて何もできないのを思い出し、くやしがる)」
軍司「早島君!」
早島「はい」
軍司「続けてくれ。でも・・・」
早島「?」
軍司「少しでもあやしいと思ったらすぐにきってくれ。」
早島「・・・はい」
軍司「おれたちは本気で助かりたいんだ」
早島「・・・大丈夫。」
 早島、再びPCを開き活動する
成田「こっちはどうしましょうか?」
軍司「そうだね、まずは、燃えやすいもの・・・ダンボールとか、紙ごみとかなにかそういうものを集めよう」
成田「わかりました。」
小机「燃えすぎて火事になったりしなきゃいいけどな」
軍司「挙手しろ!」
小机「・・・」
成田「一階にもう一度行きます」
軍司「大丈夫か」
成田「ゴミ置き場からダンボール倒れてたの見たんです」
軍司「・・・」
 成田、はけようとする
 しかしふりむいて
成田「?」
軍司「?・・・」
成田「・・・平気ですよ。小学校のときボーイスカウト少しやってたんで。」
軍司「本当にいいのか?」
成田「勇気だけは忘れられませんから」
 成田、はける
小机「・・・負けだ」
軍司「?」
小机「負けだ、負け。ゲームオーバーだよ」
 軍司、小机の肩をおもいきりつかむ
軍司「なんであんたは勝ち負けでしか物事を考えない?」
小机「だって・・・だってそれしかないだろうが」
軍司「それしかない?」
小机「サッカーでも野球でも、陸上でもなんでも、結局勝ったか負けたかしかない。引き分けは・・・あるかもしれないけどどっちにしてもなにかでいつか決着づけるだろう?人間、勝つか負けるかなら、勝つことに美を考えるはずだ。たぶん先生も」
軍司「おれは・・・」
小机「あるだろうが」
軍司「・・・」
小机「あるだろう?だれでも勝ちたいもんだよ」
軍司「・・・」
小机「勝てば、それにインセンティブがついてくる。人々からの尊敬、キャリア、そして・・・過去の抹消」
軍司「抹消?」
小机「・・・おれさ、小学校と中学校のときおもいきりいじめられっこだったのよ。毎日毎日殴られて、使いっぱしりさせられて、机、隠されたり、靴に蜂蜜入れられたりさ。生き地獄だった。女子にまで笑われてさ、おれの味方なんかひとりも、いやしなかった。頼みの先生もさあ、目つぶっちゃってさ」
軍司「・・・」
小机「だから今でも先生って言う人種が信じられなくてね」
軍司「そういう人間ばかりが先生やってるわけじゃない」
小机「そういう人間にあたっちまう子供がいるなら、それはそれで問題じゃねえのか?」
軍司「・・・」
小机「中学三年の京都の修学旅行の最終日の夜中に、ぐっすり寝てたおれの顔におもいきりバケツで冷たい水ぶっかけられたのよ・・・おれ、びっくりして中学にもなって寝小便しちゃって・・・馬鹿にされて囲まれて袋叩きにあってるときに、こいつらを見返すためにはなにをすればいいか考えた。体育もできない、部活でもヒーローになれなくて応援団長にしかなれないおれは何を武器にするかってことをね。そしてそれは勉強しかないんだって気がついた」
軍司「・・・」
小机「気がついたらなーんだって感じだったよ。それから毎日毎日睡眠時間三時間で売れっ子タレントなみの時間で小学校からさかのぼって教科書をひっくりかえした。丸暗記だった。そしておれは進学校に合格した。」
軍司「・・・」
小机「おれの合格を知ったときのやつらの顔ったら、おれが覚えてる中で一番面白かったよ。口をぽかーんと、あけはなってさ、悔しげに俺を殴ろうとしたやつもいた。なぐれなかったけどね、もうそのときはおれは学校の中でトップになっていたから。」
軍司「・・・」
小机「そこから、おれは人にはだれでも武器をもてば勝てるんだって思ってここまでやってきた。人によってはそれは、バットで球を打つことだろうし、足でボールをけってゴールにぶちこむことなんだろうけど、おれはペンで人に勝つことしかなかった。ペンさえあれば、ほかのやつに追い抜かれることもないし、おれにかなうことはない。ペン一本で今の会社にも入ったし、営業のトップを守りつづけてるのもペンだ」
軍司「ペン?・・・」
小机「そうだ・・・」
  そのとき
早島「まずい!」
 早島が叫ぶ
 軍司、急いで彼の元へ走る
早島「・・・『やばい!携帯の充電きれそう~!』」
軍司「なに!」
早島「ずっとPCでつないでるもんだと思ってた・・・」
軍司「急がないと」
小机「たまには人の話聞けよ」
軍司「なんだ!」
小机「そいつさあ、娘を名乗って、全部ひとりで自作自演でやってるとか」
軍司「こんな混乱したときにそんないたずらしたところで、何の得がある?」
小机「あるんだよ」
軍司「そんなに進んで自分の首を絞めるようないたずらする人間がいるとは思えない」
小机「ネットにはもうひとつの日本がある。」
軍司「もうひとつの?」
小机「今年の初めにも、授業参観で馬鹿にされた親が腹いせに何人もの人間を使い分けてグチをずっと書き込んでる奴がつかまった。」
軍司「・・・」
小机「混乱した今だからこそ、おもしろがっていたずらする連中ってのが必ず出る。世の中そんなもんだ」
早島「僕は信じます」
小机「パソコン使った仕事やってるなら、もっと疑えよ。」
早島「・・・」
小机「いいか、表の日本の世界だとな恥ずかしくて自分でなかなか発言したがらない奴がいるとする。でも心には思うことが山ほどあって、すっきりさせたくて架空の日本のどまん中でほえるんだって」
軍司「しかし」
小机「じゃあ今から言う質問を打ち込んでくれ。」
軍司「・・・」
早島「あんたが娘なら、これからの日本をどう思ってるのか?」
早島「・・・・」
小机「国民の代表が総理なら、その子供なら、親父とおんなじようにおれたちのことをもっと思ってくれるはずだ」
軍司「・・・」
小机「ぐずぐずしてねえで、さっさと打て!電池なくなんだろう?」
 ふたり、悩む
 そのとき
成田「打ちましょう」
三人「!」
 ダンボールをいっぱい抱えた成田が立っている











第三章 希望
 成田、ダンボールを置いてゆっくり入ってくる
成田「早島さん、メール打ってください」
早島「でも」
成田「娘さん助けに行きたいんです。」
早島「・・・」
成田「証明してやりましょう。」
小机「!」
成田「信じない人に。」
小机「信じないといってるわけじゃない。信じられるポイントがあやふやだからだ」
成田「信じさせますよ」
小机「・・・」
成田「彼女の思いを聞かせます」
三人「・・・」
成田「僕らがずっと生きる・・・この国を・・・」
小机「ずっと生きる・・・」
成田「お願いします!」
 早島、意を決したように打ち始める
 軍司、その画面をみながら、下に下りる
早島「送信しました」
小机「返事くるかな」
早島「くるでしょう、必ず」
成田「よし、それまでにこのダンボールを屋上にあげましょう」
 成田、軍司、はけようとする
 そのとき突然メールの着信音
早島「ん」
 早島、PCにかけよる
成田「早島さん!」
早島「メールです!」
 早島、メールを開く
早島「(受信ボックスを開いて)娘さんからです!」
 三人、駆け上がる
軍司「早く開いてくれ!」
成田「待って!」
小机「なんだよなんだよ!」
成田「ここに添付ファイルがある」
小机「そんなのどうだっていいだろう!」
成田「早島さん、なにかファイルをつけてって言いましたか?」
早島「いや、そんなことは・・・」
小机「読んでくれ!」
早島「そんなにあせらないで」
 とめようとする早島
 しかし、軍司あせってメールを
  勝手に開く
軍司「『喫茶店で閉じ込められたみなさんヤッホー。電池がなくなりそうなんで、最後のメールするね。オトコって夢がないと生きていけないんだあ。あたし、夢ばっかりおっかけてるやつって嫌いなのよ。夢ばっかり見ていても、何にも始まんないよ。ピーターパンシンドロームなオトコたちがいるこの国は・・・はやいとこ・・・なくなっちまえばいい・・・』」
三人「!」
小机「なんだって・・」
早島「・・・」
 そして、突然、PCが落ちる音
早島「あ!」
 軍司、かちかちと何回もキーをたたく、
 しかし、PCはうんともすんともいわない
小机「電池切れか!」
 成田もかけよる
 軍司、あいかわらずカチカチやるが
早島「(冷静に軍司の手を止めさせる)」
軍司「(早島を振り向く)」
 早島、ゆっくりとPCの画面を閉じて、端に歩く
 みんな、そんな早島を見る
成田「早島さん!」
早島「(動かない)」
軍司「早島君!」
早島「(呆然)」
 軍司、早島にかけよる
軍司「逃げるのか!」
早島「・・・」
 軍司、早島の前にまわり
軍司「下からは出られないんだぞ」
早島「・・・」
小机「おいおいおい、いったいなにがあったんだ」
早島「(小さく)ウィルスです・・・」
小机「は?」
早島「(絶叫)ウィルスです!」
みんな「!」
早島「添付ファイルのウィルスのせいで・・・PCがダウンしました」
 早島、がっくりとへたりこむ
 みんな、呆然とする
 そんな中
小机「(絶叫)くそネカマ野郎が!」
 みんなふりむく
小机「やっぱりだまされたじゃねえか!」
みんな「・・・」
小机「先生!」
軍司「・・・」
小机「これはおれたちにとってかなりの致命傷じゃねえのか?」
軍司「・・・」
小机「先生がこんなオタクどものいうこと聞いて、勝手に信じちまったから、せっかくの命綱をぶっちぎっちまったじゃねえか!」
軍司「・・・」
小机「大いなるコントロールミスだ!責任はどうとってくれるんだ?」
軍司「申し訳なかった」
小机「あやまるだけ?」
軍司「・・・なんとかする」
小机「はあ?」
軍司「(ひざまづいて)おれが責任をもってみんなを助ける」
小机「かっこだけの言葉はいてんじぇねえよ!」
軍司「!」
小机「先生」
軍司「・・・」
小机「おれのうでを自由にしてくれ」
みんな「!」
小机「おれが立て直す。」
 軍司、小机のそばによる
成田「軍司さん!」
軍司「・・・申し訳ない」
成田「・・・」
軍司「おれは・・・人の上にいる権利がないみたいだ」
成田「・・・」
 そして、小机の腕のテープをはがそうとする
 そのとき
成田「待ってください」
 成田、歩いてきて、軍司をどかす
軍司「!」
 成田、小机のテープをはがす
 自由になった小机
小机「(手をさすりながらため息)さてと、どう(立て直そうかな)」
 そのとき
成田「(大声で)じゃんけん、ぼい」
成田、じゃんけんの腕を出す
小机「(瞬間的に反応して手を出す)」
みんな「!」
 勝負は
 小机の負けだった
小机「ふん、がきの遊びになど、つきあってられんわ」
成田「(小机の前に立ちふさがる)」
小机「どけ!」
 成田、どかない
小机、成田をどかそうとする
成田「小机さん」
小机「うるせえ。こんなときにじゃんけんなんかして(る暇は、ねえんだよ)」
成田「(かぶぜるように)負けましたよね?」
小机「ああ、負けたね」
成田「(にやりと笑う)リーダーは・・・僕ですよね?」
みんな「!」
小机「きさま・・・」
成田「リーダーは・・・じゃんけんで買った奴ですよね?」
小机「・・・」
成田「最初のころ、そうやってリーダーになったじゃないですか?」
小机「こ・・・こんなのが認められるか!」
成田「はい?」
小机「い、いきなりの不意打ちじゃねえか!」
成田「(早島と軍司に)今のリーダー決めじゃんけんが有効だと思われる方は手をあげてください」
ふたり「・・・」
小机「認めるわけねえだろうが・・・」
 しかし
 ふたりは手をあげる
軍司「じゃんけんの勝者がリーダーをやる」
早島「公平に決めるためです」
成田「多数決を否定する、おつもり?」
小机「!」
軍司「あんた、俺にいったよな」
小机「・・・」
軍司「社会人なら自分がいったことに責任持てって」
小机「・・・くそ!」
 小机、腹いせにイスをける
小机「痛え!」
 小机、足を抱えて倒れる
 成田、すぐにかけよって
成田「大丈夫ですか!」
小机「!」
軍司「よせ、自業自得だ」
小机「(かっこ悪いのでだまっている)」
成田「僕の肩につかまってください」
みんな「!」
成田「ひとりも脱落者を残したくありません。」
小机「・・・」
成田「ほら!」
 小机、渋る
 成田、その手を無理やり自分の肩に手をかける
小机「やめろ!」
成田「え?」
小机「は・・・はずかしいだろうが・・・」
成田「帰りましょう」
小机「え」
成田「ずっと生きていく、この国のために・・・」
 成田、小机を肩にかけて立ち上がる
軍司「成田リーダー」
成田「はい」
軍司「この後はどうしますか」
成田「上にダンボールを持って行きましょう」
軍司「わかりました」
成田「ダンボールを頼みます」
軍司「了解!」
 軍司、ダンボールを持つ
 しかし量が多いので
軍司「早島くん」
早島「・・・」
軍司「手伝ってくれ」
早島「・・・」
軍司「?」
早島「手伝えません」
軍司「どうして!」
成田「ずっとサポートしてきてくれたじゃないですか!」
早島「いいんですか?」
ふたり「?」
早島「僕は皆さんをだましたんですよ」
軍司「・・・」
早島「手伝えるわけがないです!」
成田「いいですよ」
早島「?」
成田「行きましょう」
早島「でも」
成田「男の約束を果たすためです」
早島「!」
軍司「ん?なんだ」
成田「秘密です」
軍司「え」
成田「(早島に)助かったら聞かせてくれるんですもんね?」
軍司「(早島に)そうなのか?」
 早島、悩む
早島「・・・はい」
軍司「なら、手伝うしかないな」
成田「リーダー命令ですから」
 早島、悩むが、
 やっとダンボールを手にする
成田「上に行きましょう」
 全員うなづいて、上へ











終章 ずっと生きるこの国で
 全員屋上に出る
成田「みなさん、いいですか。」
三人「(空を見上げてうなずく)」
成田「始めましょう」
 全員ダンボールを真ん中に積み上げる
 それなりの高さになる。
成田「火をつけます」
 三人、成田を見守る
 成田、震える手で、ライターをいじる
 しかし・・・
 火がつかない
早島「風が強いからつきにくいですね」
成田「すいません」
軍司「落ちついて!落ち着いて、もう一度チャレンジするんだ」
成田「‘(強くうなづく)」
 成田、何回もいじる
 しかし無情にも火はつかないのであった。
成田「そうだ・・・」
軍司「どうした!」
成田「今朝、駅で使ってから、ガス切れだった・・・」
軍司「くそ!」:
早島「ライターにまで見放されましたか・・・」
成田「キオスクで買っていれば・・・」
 そのとき、
 うずくまってた小机がいきなり立ち上がる
成田「小机さん!」
 小机は、ダンボールを一枚とると
 両手にもってあげる
軍司「なにするんだ!」
 小机、かまわず
 ダンボールでおおきく空を仰いで歩き始める
 左右に走ったりする
軍司「狂ったか!」
小机「(仰ぎながら)うるせえ!」
みんな「!」
小机「ちまちま反省しててもなんにもならねえじゃねえか!」
みんな「・・・」
小机「この国で生きていくんだろ!」
みんな「・・・」
小机「生きていくためならなんでもしやがれってんだ!」
 小机、どんどん仰ぎながら動く
 それを見ていた、成田
 だまって、ダンボールを持って
 成田も仰ぎ始める
軍司「リーダー!」
 成田、やめない
小机「いい動きだ!」
軍司「おい!」
小机「よし、もっとだ!」
 ふたり、もっと走り回る
 軍司、早島、見てるだけ
小机「(走り回りながら)リーダー」
成田「(同じく走り回りながら)はい」
小机「さっきは・・・ありがとうな・・・」
成田「え!」
小机「(大声で)あ(りがとう、と言おうとして)・・・なんでもねえよ!」
成田「どうしたんですか!」
小机「うるせえ!もっと仰げ」
成田「はい!」
 ふたり、もっと仰ぐ
 成田、見てるだけのふたりに
成田「やりましょう!」
軍司「・・・」
成田「リーダー命令ですよ!」
 渋るふたり
 しかし、二人もダンボールを持つ
 そして、それぞれの位置に全員立つ
 いったん、ダンボールをおろす
 みんな、空を見つめる
成田「みなさん、それぞれの思いをこめましょう」
 三人、うなづく
 成田、ダンボールを持って
成田「彼女にうまくプロポーズできますように!」
 成田、あおぐ
軍司「素直に、あやまれるように!」
 軍司、あおぐ
早島「おもしろいことができる仕事に就けますように」
 早島、あおぐ
小机「来年の長者番付の一位はおれがもらった!」
 小机、あおぐ
 みんなあおぐ
 遠くから飛行機の音が近づいてくる
みんな「この国で、おれたちはずっと生きていく」
 飛行機の音が近づいてくる
軍司「来た・・・」
小机「どっちの方角だ?」
早島「風が強いですからね、音が流されてるから・・・」
成田「あ!」
三人「?」
成田「皇居のほうからです!」
 全員そちらを向く
 飛行機はどんどん近づいてくる
 みんないっせいにあおぐ
小机「助かったな」
 四人、ダンボールを放り投げて手を取り合って喜ぶ
 歓喜!
 それが終わるとみんな、すがすがしい顔でそれを見ている
 エンディング曲高まっていく
 ・・・
・ ・・













成田「ん?」
小机「あの飛行機って、なんか・・・」
軍司「おれたちに近づきすぎてないか?」
早島「日本の国旗って・・・あんなに赤いやつでしたっけ?」
三人「え・・・」
 四人、ダンボールをおろしながら飛行機を見る
 飛行機についてる国旗の色は、全体が赤色だった・・・
 その飛行機はどんどんこちらに近づいてくる
四人、絶叫する
 暗転

 END