2008年5月12日月曜日

Island Girl

登場人物
和田 千佳・・・恭子
戸山 塔子・・・砂月
永井 雄・・・柄川 匡史
ナンダ・ナイロム・・・斉藤 歌奈子

第一章 東京のパーティ
暗転中
三人「かんぱーい!」
コップを合わせる音
明転

ここは港区のとあるマンションの一室。
真ん中には机があり、その上には酒の空き瓶が数本転がっている
机の真正面に、和田が座り、その左横に永井が座っている。
そして右隣には戸山が、酒に負けて寝そべって、ぐーすか、寝ている。
どうやら、かなり、飲みの後のようだ
和田「(戸山の寝息を確認して)寝ちゃった・・・」
永井「・・・寝ちゃったね」
和田「昨日、トミヤ、遅番だったからね。で、今日は早番」
永井「遅早(おそはや)ってやつですか?」
和田「まったく、労働基準法違反しまくりだよね」
永井「どこもそうだよ。うちも残業代、課長以上は一切、出ないもん」
和田「でも、課長以上は三十万以上の給料保障されてるでしょ。」
永井「ごもっとも」
和田「はやく、出世しなさいよ」
永井「出世といえば、この前、後輩のツアコンに先、越された」
和田「ああ、伊藤さんー、だっけ?」
永井「五月の末にサウスアイランドのツアー企画して、いざ袋あけてみたら客に指名手配犯らしき人いたり、成田離婚の奴いたりで問題ありまくりでめちゃくちゃになったんだけどなんとか成功させやがってさ。」
和田「気がついたら、本社の企画営業部に転進」
永井「ボディランゲージしかやんない現地のパイロットと今はつきあって、ますます幸せ絶好調」
和田「あんたもツアコンの端くれなら、早くいい企画出して結果出しなさいよ」
永井「(ため息)・・・わかってるけどさー・・・」
戸山「(寝言)ありがとー!」
和田「(それを聞いて)あーあ、夢の中でも誕生日、祝ってもらってるみたい」
永井「幸せだ」
和田「あんたも彼氏なら、そろそろどうなのよ?」
永井「なに?」
和田「・・・結婚」
永井「さ、そろそろかたづけようかー!」
和田「話、そらさない」
永井「かんべんしてよー」
和田「あたしは戸山塔子の友人代表、和田千佳としていってるの」
永井「その問題は、後、後・・・」
  永井、机のものを片付け始めようとする
和田「(その永井を止めて、ニヤリ)」
永井「(苦笑い)」
和田「何年つきあってる?」
永井「ご、五年」
和田「長い!」
永井「しょうがないだろ?」
和田「何がしょうがないの?」
永井「塔子ちゃんの親に会おうっても、こっちに仕事がはいったり・・」
和田「仕事と塔子ちゃんどっちをとるの?」
永井「そういう平成初期のドラマみたいな質問しないでよ」
和田「は!最低」
永井「なんだとー!」
和田「人のことも考えない自分本位な、世渡りベタ」
永井「人のこと言えるかよ!猫マンマばっか作りやがってさ」
和田「猫マンマって?あたしが作ってんのは、キャットフード!」
永井「猫マンマじゃん。猫のエサ」
和田「いいじゃないの。だれも参加しないような旅行企画ばっか作って、上司に毎回、始末書書かされるやつとは大違いな仕事してんの!」
永井「なんだよ」」
和田「今月もキャットフードの新作のプレゼン、通ったもん」
永井「・・・」
和田「北海道羅臼産の昆布ダシと日本海のつめたーい!海にもまれたカツオで作ったセレブ専用フード!その名も『○○(アドリブ)』!」
永井「ダサ!」
和田「社長も超喜んでた。試食してからね、『わが社は和田君の力で、まわってるようなもんだ』ってね。言われたもん」
永井「(ふてくされて)よかったね」
和田「あたしはしっかり結果残してるもん。どこかのだれかさんみたいにはなんないから」
  そのとき、戸山むっくり起きだして
戸山「(寝ぼけ声で)なに・・・(ケンカしてんの?)」
和田「あ?ああ・・ごめん、つい・・・」
永井「起きちゃった?ごめんね、声、デカいもんでね・・・あのオバさんが」
和田「なーにー!」
戸山「うるさい」
ふたり「すいません」
戸山「あたしの・・・せっかくの・・・バースディが・・・」
和田「ごめんね。でも、つかれてんじゃないの。」
永井「そうだよ、先に寝なよ」
戸山「ええ、まあ・・・」
永井「ベッド、連れてこうか?」
戸山「・・・いいよ・・・だいじょぶ」
永井「そう・・・」
和田「(気を利かせて)あ・・・ああ、ごめんね・・・えーっとそろそろ、あたし、コンビニ行ってくるわ」
戸山「行かないで」
和田「そう?・・・そう・・・かー」
戸山「気、使わなくていいから」
和田「そんなんじゃ」
戸山「千佳ちゃんの嫌なところその一、いやらしいほど気を使う」
和田「でもさ、ひさしぶりのオフでしょ、明日は。だからふたりきりで」
戸山「雄君、明日朝から仕事だもんね」
永井「すまん」
和田「え!オフとれたって、おととい言ってたのに」
永井「ちょ・・・ちょっとね・・・先月の月末書類まだ終わんなくて・・・」
和田「やっぱ・・・」
戸山「せめないで。」
和田「いや、普通に考えたらおかしいよ、そんなの。甘いよ、塔子ちゃん。もっとコイツ、攻めないと」
戸山「いいの」
和田「そんな・・・」
戸山「いいから」
和田「・・・」
戸山「そんなの・・・慣れた・・・」
永井「・・・」
和田「・・・」
  少し重い空気
  それを察して
戸山「ご・・・ごめんね・・・さ、かたづけ、かたづけ!」
  戸山、テーブルにあるものを全部、盆にのっけてかたづける
和田「あ・・・あたし手伝うよ」
永井「ぼ、僕も」
戸山「(強く制圧するように)いいよ」
和田「そ・・・そう?」
永井「・・・」
   戸山、全部持ってハケる
和田「行っちゃった・・・」
永井「(ため息)」
和田「最近、ちょっとイライラしてるみたい」
永井「そうなんだよね」
和田「あの件」
永井「CDレンタル担当になった件」
和田「ほんとは映画がものすごく好きで、だからビデオレンタル屋がいいってトミヤに入ったのに・・・」
永井「あそこの店の売り上げ自体悪いからね。塔子ちゃんのせいじゃない。店全体の責任なのに」
和田「塔子ちゃんだけが責任かぶって、CDレンタルに・・・」
永井「だから・・・やる気なくなってるのか・・・」
和田「この前、一緒に買い物行った帰り、ボソッとね『やめよかな』って」
永井「言ってたの?」
和田「(うなずく)」
永井「こりゃかなり重症だ」
和田「(永井に押しかけて)どうすんの?」
永井「そんなこと言わないでよ」
和田「もう頼りなのはアンタしかいないんだからね」
永井「プレッシャー(和田の重みに耐えられなくて沈む)」
和田「(たたき起こして)プレッシャーに弱いのはわかりきったことだけどさ」
永井「うーん・・・(しばらく歩き回って)そうだ!」
  永井、ハケる
  そして、戸山をむりやりつれて戻ってくる
戸山「(その手を離そうとして)ちょっと、離してよ!」
永井「いいのいいの(強引に)。」
戸山「洗剤つけたまんまだよ」
永井「オーケー。いいかい?汚れた皿は逃げたりしないよ」
和田「(その言葉を聞いて影で)オエッ」
  永井、ニヤリと笑うとおもむろにポケットからあるものを取り出す
  チケット袋だ
戸山「?」
永井「開けてみて」
  戸山、チケット袋を開ける
戸山「・・・これ・・・」
和田「(戸山の持ってるチケットを横から見て)成田→サウスアイランド・・・って」
永井「見りゃわかるだろ?飛行機のチケット」
戸山「すごい!」
永井「そう?(得意げに笑い)」
和田「でも、どうして」
永井「プレゼントだよ。サウスアイランド七泊九日間の癒しツアー。」
和田「おかしい。あれほど金ない、金ないって言ってたのに」
永井「このために貯めてたんだよ」
和田「(チケットをよく見て)あんたんとこの名前が書いてある」
戸山「どれどれ・・・ハミングバードトラベル社」
永井「うちで安く買ったの!」
和田「やっぱ、なんか裏があるね」
永井「ないよ」
和田「(チケットを奪い、光に透かして)ばったもんのチケットじゃないの?」
永井「違う!」
和田「わかった!あんたのツアー企画、参加者だれも来ないから、騙して乗っけてってやつじゃない?」
永井「(あわてて)んなわけないだろ! いいかい、聞いて驚くな。」
戸山「何?」
永井「どうもこの島には宝があるらしい」
和田「んな馬鹿な」
永井「ま、うわさなんだけどね。聞いたところによると、三つの願いがかなうらしいよ。」
和田「ね、塔子ちゃん、ついにこいつ、いっちゃった。どうする?」
戸山「面白そう」
和田「え」
永井「だろ!」
戸山「けど、あたし、行けない」
ふたり「え?」
戸山「だって・・・ここに書いてある日・・・仕事・・・。」
永井「(かなりショック)」
和田「アンタ、塔子ちゃんのスケジュールも調べないでとっちゃったの?」
永井「え、前に、さりげなーく聞いたときはその日はオフだって・・・」
戸山「CDのレンタル率がなかなか上がんなくて、オフずらされて・・・遅番で・・・」
永井「・・・」
戸山「ごめんね・・・気持ちはありがたいんだけど・・・」
永井「(ショックから)い・・・いや・・・あ・・・こっちこそごめんね」
戸山「いいの、うちの会社のせいだから」
永井「そんな」
戸山「でもさ、もったいないから・・・千佳ちゃんと行ってきなよ」
ふたり「!」
和田「な・・・なんで、こいつと一緒に行かなきゃならないの」
永井「そ・・・そうだよ。こんな猫フェチとなんかと行きたくないよ」
和田「フェチってなんだ、フェチって」
永井「フェティシズムだよ。フェチ、フェチ!」
和田「うるさい!人をオタクみたいに扱わないで!」
戸山「やっぱり、仲いいよね」
ふたり「よくない!」
戸山「そんなとこがいいんだよ。」
和田「やだよ、こんな奴。」
永井「そう、そう。腐れ縁もいいとこだ」
戸山「さすが!学生時代からの麻雀友達ってのはこうも固いもんだね」
ふたり「徹まんしまくり」
戸山「いや、でもね。あたしは千佳ちゃんの紹介で雄君と出会っただけだから・・・」
永井「キューピットさんには感謝しとります」
和田「そんなことは・・・」
戸山「とにかく(チケットを和田の手に渡して)行ってきなよ。」
和田「無理だよー・・・」
戸山「お願い」
和田「・・・」
永井「・・・そうか・・・そうだよな・・・僕がこんなプレゼント持ってこなきゃいいんだよな・・・」
戸山「雄君」
永井「(ふんぎりつけて)わかった。わかった、わかった。(チケットを取り)また、出直してくるわ」
和田「・・・」
永井「じゃ、ごめんね。明日もはやいから・・・帰るわ」
  永井、ダッシュでハケる
和田「・・・」
戸山「・・・」
和田「・・・追っかけないの?」
戸山「・・・いいよ」
和田「(勢いこんで)追っかけて!」
戸山「!」
和田「早く」
戸山「(わけがわからず、もじもじ)」
和田「早く!」
戸山「・・・なんで・・・おっかけなきゃ・・・?」
和田「いいから早く!」
  戸山、不可解に思いながらハケる
  そして永井をつれてくる
永井「(和田に腕をつかまれながら)ちょ、ちょっと・・・」
和田「(チケット袋を渡して)行ってきなさいよ」
戸山「へ」
和田「(絶叫)行って来い!」
ふたり「!」
和田「(永井に)あんたもなんでわかんないの?」
永井「?」
和田「こういうときは強引にでも連れてくのが普通でしょ?」
永井「でも」
戸山「仕事が」
和田「そんなのどうだっていいでしょ!」
戸山「どうでもよくないよ」
和田「あんたたち、お互い好きなんでしょ!付き合ってるんでしょ!幸せなんでしょ!」
ふたり「・・・」
和田「だったら行きなよ」
永井「・・・」
戸山「・・・」
和田「(永井に)黙ってないで、なんか言ったら?」
永井「・・・よし・・・」
  永井、何かを決意し
永井「(カッコよく)塔子ちゃん、行こう!」
和田「よく言った!(拍手)」
永井「(気持ちを乗せて)沈む夕日に・・・会いに行こうよ」
和田「(クサい言葉に首をかきむしりながら)さ、最高」
戸山「うん!」
  和田、コケる
戸山「でもね、ひとつお願いがあるの」
永井「なんだい?」
戸山「千佳ちゃんも一緒にどう?」
ふたり「!」
戸山「(チケットの日付を和田に見て)この九月七日って何の日?」
和田「九月七日は・・・」
永井「○○の日(アドリブ)」
和田「(突っ込み)」
戸山「忘れちゃった?この部屋をシェアリングしはじめた日でしょ?」
和田「そうか・・・」
永井「(手で乾杯をして)よ!一年目に乾杯!」
和田「はずいよ」
戸山「ふたりで南国も楽しいけど、三人ならもっと楽しいよ」
和田「さっきまであれほどふたりでもりあがってたじゃない」
戸山「お金ならちょっとくらいならあたしが出すよ」
和田「うーん」
戸山「ね」
和田「・・・わかった、行くよ」
永井「よーし。これでオッケーだね」
戸山「うん・・・でも・・・どうやってこの日にオフをとろうか」
和田「そこだよね。あたしは大丈夫なんだけど・・・」
永井「なーに、『そうめん食いすぎて腹こわして寝てます』って言えばいいんだよ」
戸山・和田「!」
飛行機の音
暗転










第二章 宝探し 改訂版
明転
ここはサウスアイランドである
そこに三人が降りてくる
和田「だー!暑いね」
永井「さすが南国」
戸山「眠い」
和田「けっこう神経質だから」
戸山「だって、冷房は効きすぎてるし、音はうるさいし、ねむれたもんじゃないよ」
永井「わかる、わかるなー」
和田「あんたはイエスマン?」
永井「僕もほとんど寝てないもん。おかげで、よくわかんないテンションなってるんだよね。」
戸山「ずる休みじゃなかったら」
和田「え?」
戸山「そうめん食いすぎて寝てますって・・・行く前に電話で・・・」
和田「(絶句)」
戸山「・・・だれかさんが言えばいいよって言うから」
永井「だ、だろ?いい言い訳だろ?」
和田「そうでもない」
戸山「じゃ、なんかいいずる休みの言い訳考えれた?」
和田「そりゃ・・・あたしも仕事とこれとどっちとるんだよって、ふたりの前でタンカきったからさ・・・責任は感じてるけど・・・」
戸山「どうしてくれる・・・?」
  戸山、ふたりにすごんでみる
ふたり「あはは・・・」
戸山「・・・(すごんだ顔を急にくずして)いいよ、楽しんでるから」
永井「ほんと?」
戸山「うん」
和田「お、怒ってない?」
戸山「大丈夫大丈夫。楽しんでるよ」
ふたり、顔を見合わせ、ほっとして、空笑いしあう
そのとき
女「(永井の肩をおもいきり叩いて)ウンバボ!」
永井「痛い」
戸山・和田「?」
女「ニホンカラキタ、ナガイサンデスネ?」
永井「(肩をさすりながら)いったー・・・へ?」
女「ナガイサン、ナガイサン? アニガ、イツモオセワニナテマス」
永井「あー、思い出した。そうだ、そうだ」
  永井、女の子のうしろにまわって
永井「えー、こちらこのサウスアイランドの現地ガイド兼、通訳のナンダ・ナイロムさん。」
ナンダ「ナンダ!デス。ヨロシクオネガシマス」
和田「あ、ああ、こちらこそよろしく」
ナンダ「オナマエハ?」
和田「和田千佳です。」
ナンダ「チカ、ッテ、ヨンデイイデスカ」
和田「いいよ」
ナンダ「(戸山に向かって)アナタハ?」
戸山「塔子、戸山塔子」
ナンダ「トウコ、トウコ(連発)・・・トウフ(笑い)オモシロイ、ナマエデスネ。トウコデスネ」
戸山「(和田にかけより)ばかにされた~」
和田「(戸山を抱いて)なんなの!あれは」
永井「まあ、まあ、こういうこともあるさ」
和田「はじめっからあんたがガイドすればこういうことにはならないでしょ!」
永井「いや、郷に入れば郷に従えってね。こういうのは現地民に限るの!(ナンダに)さっそくで悪いんだけど、ホテル案内してくれる?」
ナンダ「ワカリマシタ。ツイテコイ!」
和田「!」
永井「ちょっと片寄った日本語だけどガマンして」
和田「片寄りすぎ」
ナンダ「チカ、ナンカイイマシタカ?」
永井「おまけに地獄耳」
和田「なーんでもありませんよー・・・」
ナンダ「サ、イキマショウ」
  ナンダ、三人を連れて舞台をひとまわり
ナンダ「ココデス」
和田「早!」
戸山「空港の隣なんだ」
永井「なにかとべんりだろ?」
和田「そうだけどさー」
永井「ナンダさん、今日のこれからはどうすればいい?」
ナンダ「コノアトハ、フーマビーチデ、カイスイヨクナンテノハ、ドウデス?」
戸山「寝たい」
永井「え」
戸山「飛行機の中、全然眠れなくって・・・だからあたしは寝たいんだけどなー」
永井「そっか・・・疲れてるもんね」
ナンダ「ダメデス!」
永井「え?」
ナンダ「ニホンジンハ、ヒンジャクナンデスネ」
和田「なんだって?」
ナンダ「ホカノクニノヒトハ、ミンナツイタラ、アタシノユウトオリ、カイスイヨクシテ、ヒヤケシテ、マックロクロスケ。ソレナノニ・・・」
和田「疲れてるんだからしょうがないじゃないの。それともなに?あたしたちを客扱いしないつもり?」
永井「千佳!」
ナンダ「ナントデモイイナサイ。コンナ、モヤシッコヲ、ミタノハ、ヒサシブリダナー」
  ナンダ、馬鹿にする
  和田、永井と戸山を部屋のすみにつれていき
和田「(内緒話で)なに、あの、ガイド!ほんっとムカつく!」
永井「(内緒話で)しょうがないだろ! 後輩から紹介されたんだ」
戸山「後輩ってひょっとして、伊藤さん」
永井「そのとおり、伊藤さんの彼氏の妹だよ、あれは」
和田「こういうとこまで後輩に負けたんだ」
ナンダ「(三人に聞こえるような大声で)ナイショバナシハ、アタシ、キライナンデスケド」
和田「(あせり)い、いや・・・なんでもないの」
永井「そ・・・そう、そう。塔子ちゃんにね、一緒に泳ごうよってね、説得してたの」
ナンダ「ソウダッタンダ。アンシンシマシタ。」
和田「そう、そう」
戸山「(ぼそっと)そんなこと、ひとことも言ってないよ」
永井「え・・・」
ナンダ「ナンデスッテ」
戸山「あたしは、寝るわ。おやすみ」
和田「ちょ、ちょっと」
戸山「千佳ちゃんのいやなところその二、まわりにながされるー」
和田「こんなとこでそんな叫ばないでよ!」
戸山「(押し付けるように)あー、あー、ほんとあれだよね。千佳ちゃんはまわりばっかり気にする。そして多数の意見にまかれる」
永井「塔子ちゃん」
和田「・・・」
戸山「寝る寝る!もう、やってらんない!せっかく、ずる休みまでして、リフレッシュしようと思ったのにこれじゃ、日本と変わん ないわ」
ナンダ「(ぼそっと)ニホンジャナイ・・・」
戸山「は」
ナンダ「(三人に向き直り)ココハ、ニホンジャナイヨ。モウチョト、ナカヨクシヨヨ」
戸山「自分でかきまわしといて、何様のつもり?」
永井「(ふたりに割って入り)ああ、もうやめようよ」
ナンダ「(かまわず)セッカク、オイシイハナシヲ、ミンナニシヨウトオモッタンデスガ・・・ヤメニシマス」
和田「おいしい・・・話?」
永井「ひょっとして・・・」
ナンダ「(永井にすりよって)キキタクナイデスカ?」
永井「ききたい!」
和田「このお調子者!」
ナンダ「(甘えて)ナガイサンモ、ニホンニ、カエタラ、イッキニ『シャッチョウサン』ヨ!」
永井「(つばを飲み込み)あー!やっぱり!聞きたい!おせーて!」
和田「塔子ちゃん、こいつ、最低だよ!、ほっといてさ、違うホテル泊まろうよ」
戸山「おもしろい」
和田「へ」
戸山「バースディのときの話でしょ?」
ナンダ「へー、バースディ、ダッタンデスネ。オイクツニ?」
戸山「二十六」
ナンダ「アタシヨリモ、ロッコモ、オバサン」
戸山「おばさんらしく、あんたの話しっかり聞いてあげる。あたしはあんたみたいな子供じみた挑発にはのらない」
ナンダ「(ニヤリ)ジャ、ハナシマスネ」
  和田、しぶしぶ、うなずく
ナンダ「コノシマニハ、タカラガ、ネムッテマス」
永井「来た来た!」
和田「シッ!」
ナンダ「サウスアイランドハ、モトモト、ムジントウデシタ。ソレヲ、ニジュウネンマエ、サンニンノ、ニホンジンノ、カネモチガ、ヤテキテ、ココヲ、イチダイリゾートチニ、カエマシタ。サンニンハ、コウジガ、スベテオワッタヒニ、ウスラヤマノ、ドコカニ、コノシマノコレカラノ、ハッテンヲイノッテ、シマノ、キトウシト、イッショニ、アルモノヲ、ウメタンダソウデス。」
  三人、聞き入る
ナンダ「ソレカラ、イママデ、ナンニンモノヒトガ、チャレンジシマシタ。デモ、ダレヒトリトシテ、ミツケルコトハ、デキマセンデシタ。ナゼナラ・・・」
永井「(つばを飲み込む)」
和田「なぜなら?」
ナンダ「(いびき)」
三人「寝るな!」
ナンダ「(起きて)ソノハナシハ、オイトイテ」
和田「気になる!」
ナンダ「タカラヲミツケルト、ミッツノ、ネガイガ、カナイマス」
永井「ほいほい!」
ナンダ「ヒトツメハ、アナタノ、ナヤミガキエマス」
戸山「悩みが・・・消える?」
ナンダ「フタツメハ、ウソガバレル」
永井「う、嘘が・・・ばれる」
ナンダ「ミッツメハ、ミライガ、ミツカル」
和田「未来・・・」
永井「社長だ!社長!(ウハウハ)」
ナンダ「アタシ、ジツハ、ソノキトウシノ、マゴデス。ソシテ、コレガ」
  ナンダ、ぼろぼろの紙を広げる
永井「宝の・・・地図」
和田「ディズニーランドみたい」
戸山「インディ・ジョーンズ」
ナンダ「ドウシマス?」
永井「よーし、行くぞ!」
和田「なんか・・・うーん」
ナンダ「マヨッテマスカ?(笑い)ザンネンデシタ!アナタタチノ、センタクシハ、ヒトツシカナインダナ、コレガ」
ナンダ、三人分の帰りのチケットを出す
和田「!」
永井「なんで・・・持ってるの?」
ナンダ「サッキ、ナガイサンノセナカヲ、オモイッキリタタキマシタヨネ?」
戸山「あのときに・・・」
ナンダ「ワルイコトハイイマセン。タカラヲサガセバ、カエシテアゲマス。」
和田「・・・探さないって言ったら?」
ナンダ「コノチケットハ、カエシマセン」
永井「そんな・・・」
ナンダ「サア、タカラヲサガシテ、シャッチョウサンニナッテ、カエルカ、サガサナイデ、イッショウ、サウスアイランドニ、ホネ    
   ヲウズメルカ、イマノオキモチハ・・・ドッチ?」
  三人、またまた端っこによりひそひそ話
永井「行こうよ!」
和田「・・・しかたない(ムスっと)」
戸山「ふふ、史上最高のずる休みかもしんない」
和田「そんなもんじゃないかもしんないんだよ」
永井「(咳払い)とにかく、三人一致でいいね?」
ふたり「(それぞれ、うなづく)」
  三人、ナンダに向き直る
和田「(覚悟をきめて)いいよ」
ナンダ「ソウコナクチャ!」
永井「絶対見つけてやるからな!」
和田「(ため息)」
ナンダ「デモ、ソノマエニ・・・」
戸山「なに?」
ナンダ「アタシハ、ジブンノ、ハツゲンニハ、セキニンヲモチマス」
三人「?」
ナンダ「サガスマエニ、フーマビーチデ、カイスイヨクデス」
三人「えー!」
ナンダ「サア、ハヤク、ミズギニ、キガエロイ!」
波の音
暗転








第三章 うすら山の告白
明転
夜の音
ここはうすら山である
四人がそれぞれの地面にはいつくばって、小さなスコップで掘っている
戸山「ほんとにここでいいのかな?」
和田「いいんじゃないの?地図には山のふもとのどこそこってあったんだから」
戸山「ねむ・・・い」
和田「(半分ヤケ)やるしかないっしょ。チケット戻すためにも」
戸山「海でワニ歩き五十周なんて」
和田「小学一年生以来」
戸山「(肩をおさえて)肩痛い」
和田「(腕をまわして、ため息)」
永井「(遠くのほうから)僕も・・・」
ナンダ「モンクバッカリ、イッテナイデ、ホリナサイ」
永井「(同時に)はーい・・・」
ふたり「(同時に)へーい・・・」
永井「(和田、戸山に近寄って)なんだか、ほんとに、大変なことになってきた」
和田「あんだがボーっとしてて、帰りのチケット取られたのが悪いんでしょ?」
永井「すまん」
戸山「帰りたい」
ナンダ「タカラヲ、ミツケテカラデショ!」
  永井、遠くのほうからダッシュしてきて
永井「タイム!」
ナンダ「ハ?」
永井「休憩をいれたい」
ナンダ「ソンナノハ、サウスアイランドノ、ジショニハ、ノッテナイネ」
和田「(永井に助け舟。挙手して)休憩をとって、すこし間を入れたほうが、仕事効率がいいです!」
戸山「(同じく)常識、常識!」
ナンダ「(仕方ない)ワカッタ、デハ、スコシダケ。アタシ、ショウショウヲタシテキマス」
   ナンダ、スコップを放り投げ、ハケる
和田「なに、あれ。」
戸山「ほんとは自分が休みたかったんじゃないの?」
永井「(汗を拭きながら)みんな、ちょっと考えがある」
和田「え」
永井「なぜ、僕らに探させるんだろう」
和田「そこね。あたしも気になってた」
戸山「どうせ、くだらない理由でしょ」
永井「今までこの島には何万人って観光客が入ったはずなのに。」
和田「ほかにもいたならそっちを狙えば良かったのに」
永井「・・もしかして、僕たちに掘らせて、見つかったら横取りしちゃおうって」
戸山「で、使われるだけ使われて、殺されちゃったり?」
和田「考えすぎ!」
永井「いや。わからんよ。」
戸山「そうそう。」
和田「もう、ふたりともさー」
戸山「あ!ね、雄君。あいつのとこ、いって調べてきてよ」
永井「!僕が?」
和田「それ、いいアイディア!ほれ、行って来な!」
戸山「雄君!」
永井「・・・んもう・・・しょうがないな・・・」
和田「よ!社長さん!」
永井「よせやい!」
戸山「(かしこまって)わたくしも将来の社長婦人として、しっかりふるまわせていただきます」
永井「(戸山に)そう?(まんざらでもなく)・・・じゃ、いってくる」
  永井、はける
  和田、永井が行ったのを確認して
和田「へへへ・・・」
戸山「なんか悪い気が・・・」
和田「気にしない、気にしない。」
  和田、ねっころがる
  戸山、懐のかばんをがさごそ
戸山「(かりんとうを出し)はい!」
和田「かりんとう」
戸山「そう」
和田「ひさしぶりに見たなー。ちっちゃいころよく食べたっけ」
戸山「親戚の家がパンやさんでね。パンだけじゃ仕事になんないからってこういうのも作り始めたんだって」
和田「最近はどこも不景気だからね」
戸山「(一個食べてから和田に袋を渡す)ほい」
和田「(かりんとうをみつめて)・・・南の島で、かりんとうか・・・どうも・・・」
戸山「食べるの?」
和田「・・・食べます」
戸山「食べよ」
  ふたり、仲良く座って食べ始める
戸山「星、いっぱいだね」
和田「(かりんとうを食べながらもごもご)」
戸山「え?」
和田「(ようやく飲み込んで)東京じゃこんなに見れないっしょ」
戸山「(笑い)そうだね。」
和田「(見上げて)お!秋の空になってる!」
戸山「千佳ちゃん、星座とかわかるの?」
和田「(苦笑い)なんとなく・・・」
戸山「なんだ。あてずっぽうか・・・」
和田「すまん」
戸山「・・・東京じゃ・・・今頃、店まわんなくなってるんだろうな」
和田「今日って、バイトさんそんなにいないの?」
戸山「うん。」
和田「携帯に留守電たくさん入ってたりして」
戸山「(一瞬、あせり、ポケットを探しまくるが)・・・忘れてきた」
和田「その前に、ここじゃ、電波は入んないよーだ」
戸山「そっか」
和田「(ナンダの真似して)にほんじゃないよ」
戸山「(笑い)」
和田「(笑い)」
戸山「ね、『海の上のピアニスト』って映画知ってる?」
和田「聞いたことある」
戸山「なんか今のシーンがね、その映画に出てくるシーンと似てた」
和田「そうなの?」
戸山「そう、そう。お互い馬鹿な話して、笑いあってって」
和田「へー、映画ね・・・最近見てないな」
戸山「劇場でってこと?」
和田「いや、劇場もビデオも。ここんとこ、ずっとビデオ屋より、築地に行って魚とにらめっこしてるほうが多かったから」
戸山「昼の海も、なにげに楽しんだんじゃないの?魚見て、『あ、猫に食わせよっかな』なんて」
和田「熱帯魚は、いれません!」
戸山「ほんとに?」
和田「だって、あれは見るものだよ。食うものじゃない。」
戸山「ってことは?」
和田「ザ・バカンス満喫中!」
戸山「うそつき!顔が日本を恋しがってる」
和田「そりゃ、こいつの味がさ、どんなに何千キロ離れた南の島にいても、頭を日本の茶の間にもどしてくれるからじゃないの?」
和田「かりんとうのせいにしたー!ひどい」
和田「ごめんごめん。でも、新商品開発はひとまず終わったし、次までは時間あるの。」
戸山「いいよね。仕事充実してて」
和田「(ため息)そうかな・・・」
戸山「なに?」
和田「塔子ちゃん、ここ来てからイキイキしてるよね」
戸山「話し、かえない」
和田「・・・充実してるように、見える?」
戸山「(にっこり)」
和田「そうなんだ・・・」
戸山「だってさ、朝、たまに一緒になるけど、ぶ厚いかばんとかを、こう、ひょいってね、肩からさげて颯爽と出かけてく姿ははっきり言って、同じ女としてあこがれるね」
和田「(苦笑い)ほんとは・・・仕事とプライベートがバランス悪いっていうか」
戸山「あ、マンネリ?」
和田「マンネリね・・・塔子ちゃんはどうなの?」
戸山「・・・正直・・・やっぱ、やめようか・・・と」
和田「変わらないんだ」
戸山「(うなづく)」
和田「やめちゃう・・・か」
戸山「(うなづく)」
和田「しっかり考えた結果なの?」
戸山「昨日、角のドトールで考えた」
和田「ドトールね・・・」
戸山「うそうそ」
和田「そうなの?」
戸山「映画はほんとに好きなの。映画会社は、こてんぱんに落ちまくったからビデオレンタルだったら似たような職業だろうって思ってたんだ・・・でも、違ってた。来る日も来る日も、売り上げがいくら上がった、下がっただの、客からのクレームだのって・・・毎日毎日ギャーギャー言われてさ。あげくにはビデオ担当じゃなく、興味もないCDレンタルだなんて・・・」
和田「でも、こうは考えられない?自分の仕事の幅を広げるために、そうなったって。ビデオの仕事しかできないんじゃ、次ができないでしょ?CDもビデオもどっちもできれば、オールマイティプレイヤーになっとけば、昇格しても苦労しないって」
戸山「聞きたくない」
和田「え」
戸山「千佳ちゃんは、店長?」
和田「・・・」
戸山「あたしはビデオだけやりたいの!他の事なんてどうだっていい!」
和田「でも、それじゃ負けだよ」
戸山「勝ち負けしかないのかな?この世界」
和田「・・・」
戸山「あたしは・・・ひとつだけやりたいの!集中したいの!」
和田「ひとつしか見えないと、なにもできなくなる。商売って違うもんだって思うの」
戸山「それでもいい!」
和田「・・・」
戸山「じゃ、千佳ちゃんはあたしにいうだけできるの?」
和田「あ・・・あたしは・・・」
戸山「千佳ちゃんのいやなところその三。仕事できるから、できないやつの気持ちがわかんない」
和田「違う」
戸山「だって事実じゃん」
和田「は?」
戸山「うらやましい・・・」
和田「・・・その言葉が・・・いやなの」
戸山「え」
和田「・・・できる・・・できる・・・って言わないで」
戸山「・・・」
和田「たしかに・・・いっちゃなんだけど、雄に比べりゃデキるほうかもしんない。今年は一月から四つも新しいフード出したし、で、それがそれなりに売れてる・・・。でもペットフード売ったとこで、あたしは何の幸せも得てないの」
戸山「幸せ?」
和田「幸せ・・・難しいこといっちゃったかな・・・。会社じゃ、影でデキる女、使える女って・・・言われるのがステイタスみたいに言われて・・・あこがれたり、ねたまれたり・・・。でも、それって入社してから一生懸命にまじめに働いて、上の信頼をつかんで、ここまで来たの。信頼があるから、新作もまかされるんだろうし、別に女でも男でもしっかりやればここまでこれるはず。なまけなきゃね。」
  ここで一息ついて
和田「後輩から頼られ、上からも頼られて・・・でも・・・それだけなの。本当の和田千佳には、だれも触れてない・・・。業務用の和田千佳しか知らない」
戸山「・・・」
和田「むしろ触れさせないように逃げてるのかな・・・ほんとのあたしは・・・うそつきで・・・さびしがりやで」
戸山「あたしは知ってるつもりだよ」
  和田、近づいて
和田「ほんとに・・・知ってる?」
戸山「千佳ちゃん」
和田「・・・」
戸山「こんなこと・・・家では言ってない・・・」
和田「だって・・・あたしは仕事の話は持ち込まない主義だから」
戸山「そういう人の・・・弱音とか・・・説教とか・・・聞きたくない」
和田「・・・」
戸山「聞きたくないよ・・・」
  戸山、ゆっくり立ち上がりハケていく」
和田「ど、どこ行くの?」
  戸山、和田を見ながらゆっくりハケていく
  和田、戸山を追っていく



第3.5章 埋まらない空白
塔子が先に舞台に登場
下から上手に歩いていこうとすると
永井とぶつかる
永井「あ・・・」
戸山「・・・」
永井「塔子ちゃん・・・」
戸山「み、みつかった?」
永井「え?あ、ああ、まだ。」
戸山「そう・・・」
永井「なんかかなり奥に入ったらしくて・・・これじゃ、見失ったうえに僕まで遭難しそうで・・・」
戸山「そっか・・・」
永井「うん・・・」
戸山「・・・気、つけてね」
永井「・・・ありがとう」
戸山「ねえ」
永井「?」
戸山「(言い出しておいて)あ、いや、なんでもない」
永井「なに?」
戸山「あ、なんでもないよ」
永井「・・・あのさ・・・なんかあったら・・・言いたかったら言いなよ」
戸山「・・・」
永井「あ・・・ごめん・・・怒ってる?」
戸山「・・・」
永井「そんなに・・・ぼくのこと・・・嫌い?」
戸山「・・・嫌いだよ」
永井「!」
戸山「つきあってるとおもったら、大間違いだよ・・・」
永井「そんなのいやだ」
戸山「いやでも、そうなの。」
永井「なぜ」
戸山「もう・・・無理」
永井「・・・」
戸山「無理なの・・・つきあいはじめたころには・・・もう、もどれない」
永井「戻れるさ」
戸山「無理」
永井「・・・」
戸山「・・・」
永井「あれか」
戸山「・・・」
永井「あれは・・・僕が悪いんだろ?」
戸山「・・・」
永井「あれを忘れたのが・・・まだ、残ってるんだ?」
戸山「・・・わかってんなら、なんで挽回しようとしないの?」
永井「したさ、してるじゃんか。」
戸山「どこが!」
永井「いつも・・・いつもいつも塔子ちゃんのことを思って、塔子ちゃんのためになることを、塔子ちゃんが喜ぶ顔が見たいから」
戸山「そうは思えない」
永井「・・・」
戸山「思ってるつもり、ためになってるつもり、喜ばせてるつもり!つもりつもり!いつもそれなの!」
永井「じゃ・・・どうすれば・・・」
戸山「推測だけで自己満足にひたるのは・・・やめて」
永井「自己・・・満足」
戸山「あれ以来・・・ずっと・・・なにかが足りない」
戸山、去っていく
永井、考えてボーっとしてしまうが
心を決めて、さがしにいこうとする
そのとき
和田「雄・・・」
  和田現れる
永井「千佳・・・」
和田「塔子ちゃん見なかった?」
永井「・・・」
和田「どうした?」
永井「(和田にかけより)僕は・・・なにをやれば・・・いい?」
和田「?」
永井「僕は五年間・・・なにを・・・なにを・・・してきたんだ?」
和田「え」
永井「ここまで来て・・・楽しい南の島にまできて・・・言わなくてもいいじゃないか・・・」
和田「?・・・塔子ちゃんに会ったんだね」
永井「・・・」
和田「会ったんだね!(永井をゆさぶる)」
永井「(ゆさぶられて、弱弱しくうなずく)」
和田「・・・あたしもまだまだ言えないことがあって、この辺にくすぶってるの。だから、いっしょに探しにいこう」
永井「・・・」
和田「おい!そんなこと言われたぐらいで・・・腐んなよ」
永井「・・・腐ってなんか・・・いないやい」
和田「(軽く笑って)そうだよ・・・その元気があれば大丈夫」
永井「そ・・・そうか・・・」
和田「あたしが探しに行く。あんたは戻って」
永井「いや、僕が探しに行くよ」
和田「大丈夫。」
永井「もともと僕が・・・」
和田「いいの。さっきは疲れてたし、めんどくさいし、ちょっとふたりでいろいろ話したかったんだ。女同士の話。あんたが入ってくる隙間は一切ないね」
永井「・・・」
和田「だからあんたをあそこから追い出したの。ごめん。」
永井「そっか・・・」
和田「ここからはあたしにバトンタッチして」
永井「・・・」
和田「お願い。塔子ちゃんと話をさせて」
 永井、少し考えてから
  和田の手にタッチする
永井「頼んだ・・・」
和田「(力強くうなづく)」
永井「ナンダさんも」
和田「(走り始めて)わかってる」
和田、走っていく
見送る永井









第四章 うすら山の裏側で
永井、ぼーっとしてるといきなり
  声が聞こえてくる
ナンダ「ナガイサンナガイサン」
永井「え?」
  ふりむくとそこにナンダがいる
ナンダ「ビコウ、デスカ」
永井「え・・・そ、そんなことは」
ナンダ「ワカッテマシタヨ」
永井「・・・」
ナンダ「ツケラレテルノ、ワカテタヨ」
永井「・・・ばれたか」
ナンダ「アンナニ、オオマタデ、アルイタラ、クサヲ、オモイキリフミツブシテ、オトガデルジャナイデスカ」
永井「くー」
ナンダ「(永井の肩を軽く叩いて)シッパイデスナ・・・」
永井「・・・」
ナンダ「アタシヲ、ツケテ、ドウスル、オツモリ?」
永井「そ、それは、きみが宝にこだわるのはなんでかを・・・」
ナンダ「ショウジキデスネ」
永井「・・・正直」
ナンダ「アナタハイマ、スキナヒトガ、イマスカ?」
永井「い、いるよ」
ナンダ「ソノヒトトハ、オツキアイヲ」
永井「まあ・・・させていただいてるけど」
ナンダ「ナカナカ、ウマクイッテナイ」
永井「なんでわかるの?」
ナンダ「ヒトノココロガ、ヨメルンデス」
永井「こわいな・・・」
ナンダ「ナワケネーダロ!」
永井「え」
ナンダ「ナガイサンハ、ホント、バカガツク、ショウジキモノデスネ」
永井「・・・」
ナンダ「ソウイウトコロガ、ナガイサンノ、タンショデモアリ、チョウショデモアルワケデス。ショウジキモノガスキナ、オンナノコハ、ヨノナカ、ケッコウイマスカラ」
永井「なにが言いたい?」
ナンダ「サイキン、ソノオツキアイシテルヒトト、ウマクイッテマセンネ。サッキノ、クチブリダト」
永井「すべてお見通しってわけ?」
ナンダ「ベツニコレハ、ドクシンジュツデモ、ナンデモアリマセン。アタシデヨケレバ、ナヤミ、キキマスガ」
永井「そう?あのね・・・」
  永井、話そうとして顔をナンダに寄せる
  ナンダ、それを聞こうとして顔を寄せる
  そのとき、永井、一瞬の隙をついて、ナンダの耳を引っ張る
ナンダ「イテテ・・・」
  すかさず、ナンダを抱きかかえて、後ろ手に持ってたスコップを、ナンダの首にあてる
ナンダ「ナ、ナニヲスル・・・」
永井「初めてあったときのおかえし。僕ははじめっから君を信用してないんでね」
ナンダ「ドウスル・・・ツモリ?・・・」
永井「なんで宝にこだわるの?」
ナンダ「(とぼけて)アタシ、ニホンゴ、チョットシカワカンナイ」
永井「(スコップをさらに首に押し当て)質問に答えてもらおう」
ナンダ「(急に深刻な顔になって)・・・チチガ・・サガシテ、イタンデス」
永井「え」
ナンダ「タカラヲ、ホッテルトチュウデ・・・(泣き声になる。嗚咽)」
永井「そ・・・そうなんだ」
  そのとき
ナンダ「スキアリ!」
  体をひねって抜け出すナンダ
永井「あ・・・」
  ナンダ、反抗しようとする永井の頭に手をかざす
  不思議な音
永井「あ・・・」
  永井、固まり目をつぶる
ナンダ「コレハホントノ、サイミンジュツ。ナガイサン?」
永井「(催眠状態で)はい」
ナンダ「アナタノ、コイビトハ、チカ?」
永井「(首をふる)」
ナンダ「トウコ?」
永井「(うなずく)」
ナンダ「ナゼ、ウマクイカナイカ、ココロアタリハ?」
永井「(しばらく考えて)あるとしたら・・・去年の誕生日を仕事ですっぽかしたこと・・・かな」
ナンダ「オンナノコハ、キネンビガ、ダイスキダカラ」
永井「だから・・・今年はこうやって奮発したんだけど・・・なかなかうまくいかなくて・・・」
ナンダ「トウコト、ウマクイキタイ?」
永井「いきたい!」
ナンダ「ジツハ・・・アタシハ、テンシデス。」
永井「天使?」
ナンダ「ソウ。タカラヲミツケレバ、アナタノネガイガ、カナウ。タカラハ、アナタノタメニアルヨウナモノ。ハヤクタカラヲミツケテ、トウコト、アッチッチニ、ナリマセンカ?」
永井「なりたい・・・なりたい、なりたい」
ナンダ「プライベートモ、シゴトモ、ウマクイケバ」
永井「もう・・・言うことありません」
ナンダ「ナラ、テンシノユウコトヲ、キキナサイ」
永井「はい!」
ナンダ「コノサキニ、アリマス。サキニイッテ、ホリナサイ
永井「はい!」
  永井、上手に走っていく
  ひとり残った、ナンダ
ナンダ「ムフフ・・・」








かわって、舞台には戸山が先に歩いてくる
それをあとを追うようにして和田がやってくる
和田「(追いかけながら)待ってよ」
戸山「(歩く)」
和田「待ってってば!」
戸山「(ふりかえり)・・・なに?」
和田「さっきは・・・いやなこと言ったかもしんない。・・・ごめん」
戸山「いいよ・・・どうせ、あたしが悪いだけだから」
和田「そんな」
戸山「いい」
和田「もう・・・我慢できない」
戸山「・・・」
和田「・・・ひねくれてる」
戸山「ひねくれもの、あまのじゃくで結構!」
和田「でも、真のあまのじゃくじゃない」

和田「塔子ちゃんは・・・あまのじゃくを演じてるだけ・・・」
和田「・・・そんなふうに、自分の言いたいことを隠してずっとすごしてるから、ストレスがたまるんじゃないの?」
戸山「?」
和田「それで・・・そのせいで・・・イライラしたからって、それをあたしとか雄にぶつけるのは・・・やめてくれない・・・」
戸山「やつあたりなんかしてない」
和田「してる」
戸山「してない」
和田「それが全部そう。まわりに当たってるの」
戸山「当たってなんかいない」
和田「雄を見てる?」
戸山「え」
和田「最近、しっかり雄の顔見てる?」
戸山「・・・見てるよ」
和田「なら・・・なんで雄は、あんなになった?」
戸山「・・・あっちが悪い」
和田「あっち?」
戸山「・・・あっち」
和田「名前があるでしょ!」
戸山「・・・」
和田「雄は塔子ちゃんのなんなの?」
戸山「・・・か・・・れ・・・し・・・」
和田「彼氏なんだ・・・」
戸山「・・・」
和田「彼氏のように見えない、最近」
戸山「・・・」
和田「雄が、気を使って、腫れ物にでもさわるようにして塔子ちゃんと対応してるのがわかんないの?
戸山「・・・わかってる」
和田「だったら、なんでそこから次に行かないの?」
戸山「・・・許してないから・・・」
和田「なにを?」
戸山「去年、あたしのバースディを忘れたんだ、あいつ」
和田「そんなことで」
戸山「そんなことで?」
和田「そんなことじゃないの」
戸山「千佳ちゃんにとっては、小さいことかもしんないけど、あたしには大きいことなの!」
和田「・・・」
戸山「あたしがこの世に生まれた日なんだよ。世界でひとりしかいない戸山塔子が七月十二日午前零時五十七分に生まれた、記念すべき日なんだよ!大事に決まってるじゃん!」
和田「大事なのはわかる」
戸山「じゃ、それでいいんじゃないの」
和田「でも・・・こだわりすぎる」
戸山「こだわってる、いいことじゃん。浅く広くしてるやつよりよっぽどましだと思うけど」
和田「物事みんな深く深く考えていったりこだわったりするのは、いいときと悪いときがあるの!
戸山「・・・」
和田「誕生日ひとつにこだわるんだったら、もっと他のことにもこだわれないの?」
戸山「やってるよ」
和田「やってない」
戸山「そんなことない」
和田「雄にはなんのこだわりもないの?」
戸山「・・・」
  そこに、突然
  雄が不思議な顔をして現れる
和田「雄」
戸山「・・・雄君」
永井「・・・」
  そこに後ろからナンダがやってくる
ナンダ「オオゴエガ、キコエテクルカラ、キテミレバ、ケンカデスカ」
和田「・・・」
ナンダ「ナガイサンヲコンナ、クライ、ヤマノナカデ、ヒトリデアルカセルナンテ、アブナイアブナイ」
和田「あんたもひとりでトイレに行ったじゃない」
ナンダ「ナンカ、アタシノコトヲ、シラベニキタミタイデ」
ふたり「(ギク!)」
ナンダ「ショウガナイカラ、ヒトツ、マホウヲカケテアゲマシタ。」
和田「魔法?」
ナンダ「サイミンジュツ」
和田「(雄に)雄、どうしたの?」
永井「・・・」
戸山「雄君?」
永井「・・・」
戸山「(反応しない雄に)雄君?雄君?」
永井「・・・」
戸山「雄君になんてことしたの!」
ナンダ「フフ・・・・サア、ヨモ、フケテキマシタ。サッサト、ホリマショウ。」
戸山「(ナンダにつかみかかって)あんたなんなの!宝のためにあたしたちをめちゃくちゃにするの!」
ナンダ「マホウナンデスヨ?」
  ナンダ、にやりと笑って永井の背中を軽く押す
  永井、夢遊病のように、フラリと歩き始める
  それは一直線に、上手のほうに行き、スコップをがつんと差し込む
  カーンという金属音

第五章 殻の中から
和田「な、何の音―?」
戸山「(あたりを伺いながら)かーぜーのーおーとー・・・」
和田・ナンダ「・・・」
戸山「なんか、なごまない?・・・」
和田「いや、あれは確かに」
戸山「金属音・・・まさか・・・」
和田「まさかのまさかじゃない?」
ナンダ「(ニヤニヤ)マホウハ、イツモ、アナタノソバニ。アイム・プリンセス・ナンダー!」
和田「空中浮遊と縄抜けをしたら信じてあげる!(ナンダをどけて、音の元に走り出す)」
戸山「あと、けばいメイク(続いて走り出す)」
ナンダ「(ひとり、取り残されて)ガッツカナクテモ、イイノニ・・・」
  和田、戸山、着くと、まだ、ぼーっとしてる永井をもどけて、一気に掘り出す
  永井、そのあいだにふらふら、ナンダのもとに歩いてく
  ナンダ、永井の目の前でパチンと手を鳴らし、目を覚まさせる
永井「(目をパチクリさせながら)・・・え・・・僕はいったい・・・」
  そのとき、ついに掘り出す
ふたり「あった!」
  それは、古びた、小さな円筒形の缶
  和田、戸山、缶を中央に持ってくる
和田「・・・あったんだね」
戸山「けっこう、これ、かっこいいかも」
ナンダ「・・・サ、アケテミマショウヨ」
和田「・・・ついに」
永井「開けるときが」
戸山「・・・来たね」
永井「だ、誰が、開ける?」
和田「じゃ・・・こういうのは・・・やっぱり・・・男手のほうがいいから・・・」
永井「え!ぼ、僕?」
戸山「(耳元で)ひょっとしたら、昔の戦争の不発弾かもしんないよ」
和田「(同じく耳元で)いや、開けるとへんな煙が出てきて、お前の命が・・・
永井「(絶叫)い、いやだー!」
ナンダ「ンナワケナイジャナイ! モウ! アタシガ、アケマス!」
和田「待って!」
ナンダ「(待つ)」
和田「あんたは、会ったときから信じらんないんだよね。」
戸山「そうそう」
和田「あんたはあたしたちの味方?敵?」
ナンダ「テンシデス」
戸山「いい加減にして!」
ナンダ「ビク!」戸山「あたしたちをこきつかうだけ、使って」
和田「あんたのいうことは今後いっさいなにも聞かない」
戸山「そうそう」
ナンダ「フーン、オヤオヤ、イツノマニカ、ナカヨシデスナ」
和田「・・・」
戸山「・・・」
 油断したそのとき
ナンダ「オサキ!」
  パッと、缶をつかみ端のほうへ逃げる
三人「あ!」
  ナンダ、端のほうで開けようとするが・・・
ナンダ「(力をいれている)ウーン!ウーン!」
  開かないのである
和田「なんか、苦しんでるよ」
永井「ほんとだ」
戸山「(ナンダに)あたしたちだけ、いうだけいいやがって、あんたこそ貧弱なんじゃないの?」
ナンダ「シャーラップ!・・・ゼッタイ、アケテヤル!・・・」
  しかし、開かない
永井「どれどれ、貸してみな」
  永井、ナンダのもとに行くが、貸してくれない
  永井、くすぐって、その隙に取り、ダッシュ。
和田「(ナンダに)いえーい」
戸山「(永井に)雄君、絶対開けてよ」
永井「(力強くうなづく)」
  永井、缶をみつめて・・・
開けようとするが、開かない
和田「ほんとに?」
  今度は和田、開けようとするが、開かない
戸山「力で開かないなら、あたしでも無理。こういうときは(頭をさして)ここ、ここ」
  戸山、缶を、上下にふりはじめる
和田「どういうこと?」
ナンダ「(見て不思議そうな顔)」
戸山「こうやって、振って、中の気圧を変えたら、開くんじゃないかって・・・」
  戸山、一心不乱にふりはじめる
  それを見て、永井
  コントスタート
永井「(高々と足を上げてイスにすわって、酒をたのむふり)ブルーハワイ!」
和田「(それにのって)あたしは、ドライマティーニ」
  ムーディーなピアノ
  ナンダも、片隅で、バーテンになり、グラスを拭くふり
ナンダ「(しっかりした日本語で)最近、お疲れですね」
永井「(すでによいつぶれてる)ちきしょー!課長のば、ば、ばかやろー!」
和田「(ママさん)あーら、ゆーちゃん。今日も会社でいじいじされたのー?」
永井「ちくしょー!なんだ、僕が、徹夜で必死こいて、あげた、サウスアイランド癒しツアーが、定員割れだからってよー、なにも始末書書かせなくてもいいじゃねえかよー!」
和田「また書かされたの?ゆーちゃん、このまま書きまくって、末は作家にでもなったらいいんじゃなーい?」
永井「いいこといってくれるじゃねーか、ママ。でも、ぼくちんには大逆転劇があるんだ」
ナンダ「なんですか?」
永井「(ナンダに)聞きたい?」
ナンダ「(渋くうなずく)」
永井「(ママに)聞きたい?」
和田「(にっこりうなずく):
永井「あーのーね、ぼく、女友達と彼女がシェアリングしてるのね。それで彼女が今度誕生日だから、やつらをだまして、つれていって、無理やり、ツアーを実施しちゃおっかなーって・・・」
和田、戸山「こぉらー!」
  コント終わり
  永井、びっくり
和田「やっぱ、そうだったんだ・・・」
戸山「自分の仕事のために・・・」
和田「あたしたちを利用したってわけねぇ・・・」
永井「い・・・いや・・・そんな・・・ことは・・・」
和田「(スコップを永井の胸につきつけ)それが自分勝手っていうんだよ!」
永井「で、でも・・・さっきから・・・見てたら・・・た・・・楽しんでるじゃん?」
戸山「それはそれ、これはこれ」
永井「なんだよー、そっちこそ自分か(って)・・」(自分勝手といいかけて)
和田「(再びスコップを)あん?」
永井「・・・ありません・・・」
  そのとき、ケラケラ、ナンダ、笑い始める
ナンダ「ホラネ、ウソガ、バレタ」
三人「!」
和田「・・・宝をみつけたら起こる、ねがいごと・・・」
戸山「・・・うそが・・・」
永井「・・・ばれる・・・」
和田「ってことは」
永井「やっぱ」
戸山「正真正銘の・・・二十年前に埋められた宝物!」
  三人、改めて、缶をもちあげる
  三人の片手で持ち上げた缶は、空で、かがやいてる
戸山「でも、どうすれば開くんだろう
  戸山、手を降ろし、しつこく振る
永井「カギでもついてるんかなー」
  永井、缶を借り、くまなく観察する
  そのとき、和田、さっと永井から缶をとる
和田「これって、缶でしょ?」
永井「そ、そうだよ」
  和田、缶を地面に置き、足をそのうえに置く
和田「(軽く笑って)缶けりしよ」
三人「・・・」
和田「じゃんけんしよ」
ふたり「・・・」
ナンダ「(なにが起こってるかわからない)カ、カンケリ?・・・」
和田「(かまわず)ほれ、早く、じゃんけん。」
永井「(ようやく)か・・・缶けりって・・・」
戸山「ばか?」
和田「ばかだねー。缶けりして、がんがん、けっていったら、衝撃で、あくかもしんないでしょ?」
ナンダ「カンケリッテ、ナンデスカ?」
和田「日本の遊び。あたしもちっちゃいころ友達とあそんでた。このまわりに隠れて・・・って、ルールはなすの面倒くさいや。とりあえず、やろ!」
ナンダ「ルールガ、ワカンナキャ、ツマンナイデス」
和田「いいから!一緒にやれば、そのうちわかる。わかってくるから」
ナンダ「ナ・・・ナンダカ・・・ワカンナイケド、オモシロソウデスネ」
和田「でしょ!やろ!」
ナンダ「ハイ!」
和田「(ふたりのほうを向いて)あんたたちはどうすんの?」
永井「・・・」
戸山「・・・やってみる?」
永井「・・・最後の賭けだね」
和田「もう、これしかないと思う。ね、やろ!」
  ふたり、改めて、顔を見合わせ
  うなずく
和田「(それを見届けてから)よーし、いくぞ!最初はグー!」
全員「じゃんけんぽい!」
  そして缶けりがはじまる
  ここは本当にカンケリをする
  真剣勝負
  つかれきったところ(きりのいいところで)
永井「はー、はー、そろそろ開けてみる?」
和田「そだね。」
ナンダ「コンナニ、タノシイアソビハ、ハジメテカモシンナイ」
戸山「あけてみよ、あけてみよ」
  永井、せきばらいをして
  一気にひっぱる
  スポン
  間抜けな音とともに空に紙が散らばる
全員「!」








第六章 夜明け前
永井「な・・・」
和田「なに・・・これ・・・」
戸山「紙・・・」
永井「さんざん、掘って・・・なんなんだ、これ!」
   永井、その紙を取り、一気に放り投げる
和田「なにすんの!」
  和田、散らばった髪をかき集める
和田「なんてことすんの!」
永井「だって・・・だって、一円すらないんだよ!こんなの・・・こんなの掘り当てるために、昼、ひざがすりきれるまでワニ歩きして疲れきってからやってきたかとおもうと、我ながら・・・あきれちゃうよ!・・・」
戸山「ひどい」
永井「え」
戸山「雄君、ひどい・・・」
永井「だって」
戸山「そんなに、金がほしいの?」
永井「そういうわけじゃないけどさ・・・でも、疲れた体にムチ打って、探し出したのがこれだよ。そんなの・・・なしだよ・・・」
  永井、へたりこむ
  戸山、ふところらにあった、紙を取る
  それは手紙だった
戸山「  二十ねんごのわたしへ
                  熊坂 洋子
   こんにちは、そしてひさしぶり。たぶんだけど、にじゅうねんごは、きれいな、スチュワーデスさんになって、せかいをとびまわってることだろう。」
和田「?これって・・・」
戸山「・・・タイムカプセル・・・?」
  和田、また、紙を取り、読む
和田「  にじゅうねんごのぼくへ
                 相田 聡
   にじゅうねんごのぼくは、ほうそうさっかになって、たくさんのテレビにでて、タレントさんとけっこんしてるだろう」
戸山「いるいる、必ずクラスにひとりはいる。」
和田「あれでしょ、インテリっぽいやつ。チョット気取って、大人びたこといったりするやつ」
永井「インテリって言葉も久しぶりに聞いた」
  永井も、紙をひとつとる
永井「  にじゅうねんごのぼくへ
              工藤 尚史
   ぼくは、こんどうまさひこ、マッチが大好きだ。お兄ちゃんも大好きみたいで、このまえギターをかった。でも、それはクラシックギターってやつで、マッチのもってる、エレキギターじゃないらしい。ぼくは、にじゅうねんご、エレキギターを買って
  お兄ちゃんよりもうまい、マッチみたいなおとこになっているだろう。」「
和田「マッチねー・・・」
戸山「今でも、ジャニーズにいるのが、不思議よね」
永井「でも、さっきから見てるとなんか、今から二十年前に埋めたみたいだね」
ナンダ「コレヲミテクダサイ」
  ナンダ、ひとつの紙切れを出す
  和田、受け取って呼んでみる
和田「 このカプセルは、私達がこの島を訪れた記念にここに埋めるものである。これから二十年後のニ○○三年九月八日にこのカプセルを発掘し、皆で確認したいと思います
         目黒区立本町小学校 一年三組 担任 小笠原幸彦
 一九八三年九月八日 ニ○○三年九月八日のみんなへ」
ナンダ「一九八三年ッテ、アタシガウマレタトシデス」
永井「二十歳だもんね。僕たちは二十年前・・・六歳」
和田「そうか・・・あたしたちと同い年の子達が、埋めたんだね」
戸山「でも、小学一年生で海外旅行できるなんて、すごい人たち。」
永井「金持ちだったのかな」
戸山「雄君はすぐ、金で判断する」
永井「そんなことないけどさ・・・」
和田「ね、この手紙たちじゃないけどさ、大人になったらなにになりたかった?」
永井「ぼくは、大人になったら、パイロットになりたかった」
和田「あたしは・・・なんだったかな・・・お花屋さんだったかな」
戸山「はは、女の子の定番だよね」
和田「なーに、そんな千佳ちゃんはなにになりたかったの?」
戸山「映画監督」
和田「え」
永井「そのころから?」
戸山「うん。この年に『戦場のメリークリスマス』を見てね。ま、難しい話だったんだけど、子供ながらになんか圧倒されちゃって。世の中にはこんなすごいものがあるんだなって、映画が好きになって、で、それを作ってみたい、みんなが見て感動したり笑ったりするような、そんな映画をつくってみたいなって。」
和田「雄のパイロットもそんな感じ?」
永井「そうだね。まだこのころ、新潟に住んでて、誕生日に家族で東京旅行に行ったのね。東京タワーとか、あ、出来たばかりだった東京ディズニーランドも、行ったよ。」
戸山「ディズニー行ったんだ」
永井「うん。舞浜なんてできてなかったから、東西線の浦安からバスに乗っていった。まわりはまだ空き地で、すぐ海だったね。で、
帰りに羽田から飛行機で帰ったんだけど、途中でものすごく気分が悪くなっちゃって、たぶん、酔ったんだな・・・具合悪くて泣いてたらね、スチュワーデスの人が優しくしてくれてさ、なんとかなったのよ。で、感動しちゃって、スチュワーデスにはなれないから、じゃ、パイロットにってね」
和田「それが、今じゃ、さえないサラリーマン」
永井「いや、スチュワーデスやパイロットの人たちに限りなく近い、ツアコンやってるよ」
戸山「それは空港とかでしか近づいてないから」
永井「遠い?」
戸山「ちょ・・・ちょっと・・・」
永井「近いようなもんだと思ってたのに・・・」
和田「まじでかい?!」
戸山「そんな、勘違い雄君は置いといて」
永井「置いとかれた・・・」
戸山「千佳ちゃんは、なんで?」
和田「・・・恥ずかしいな・・・ただ、花が好きだったんだ。で、みんなが大きくなったら花屋さんになるっていってたから、それに流されて、花屋さん」
戸山「千佳ちゃんらしい。まわりに流されーる・・・」
和田「ちょっと!」
永井「僕はそのときの夢あきらめきれなくて、高校は航空高校、行ったよ。」
和田「でも挫折したでしょ」
永井「挫折じゃありません!勇気ある撤退といってほしいね」
戸山「ものは言いようだから」
  三人笑いあう
ナンダ「サテ、オモイデバナシハ、スミマシタカ?」
和田「すんだけど、よくもあたしたちをだましてくれたね」
ナンダ「ヒトギキワルイ。ダマシテナンカイマセンヨ」
永井「宝だっていうから、一生懸命掘ったのにさ」
ナンダ「ダレガ、タカラノナカミガ、カネメノモノダッテイイマシタカ?」
永井「・・・言ってない」
ナンダ「デショウ」
永井「でも・・・納得できんな・・・」
ナンダ「コノタカラハ、ミンナノタカラナンデス。コノテガミヲヨンデ、ナニカワカリマセンカ?カンジトレマセンカ?」
三人「・・・」
ナンダ「タシカニ、ドウネンダイノ、タニンノ、二十ネンゴのジブンニムケテノ、テガミカモシレマセン。デモ、ソレヲミテホシカッタンデス。」
永井「・・・なんで僕らに」
ナンダ「イトウサンニ、タノマレタンデス。」
永井「伊藤さんに?」
ナンダ「ソウ。イトウサンハ、ズット、ナガイサンノ、カチョウニ、オコラレルトコロ、ミテタミタイ。デ、コノマエ、ノミカイガアッタデショ。ソコデ、ナガイサンカラキイタミタイデ。」
永井「・・・」
和田「あんた、酒に弱いから・・・」
戸山「あたしたちだまして行くの、そのときにもうしゃべっちゃったんだ・・・」
ナンダ「ソレヲ、キイテ、コッチデ、アシタ、コノタイムカプセルノ、ハックツシキガアルカラ・・・ナカノ、テガミミテ、ショシンヲモドシテクレレバッテ・・・オモッタンデス」
永井「・・・初心・・・か・・・」
和田「忘れるべからず・・・」
戸山「・・・忘れてる・・・かもね・・・」
ナンダ「オモイダシマシタカ?」
和田「・・・」
永井「・・・」
戸山「・・・」
ナンダ「アタシノヤクメハ、ココマデ」
永井「え?」
ナンダ「(にっこり笑って)サヨウナラ」
和田「な、なんで」
ナンダ「イッタデショウ?アタシハ、テンシ・・・イヤ、タカラノバンニンナンデス。」
戸山「わかんない。なんでさようならなの?」
ナンダ「(ふりかえって)」
  ナンダ、下にはけようとする
  三人、おっかけようとする
  ナンダ、にっこり笑って、手をかざす
  不思議な音
  三人、固まってしまう
暗転

明転
 かたまった三人が動く
永井「あれ、いない」
和田「いない」

和田「・・・二十年前、あたしたちが小学一年生だったとき、大人って・・・大人になることって・・・なんか、夢があって、楽しそう・・・だったよね・・・」
戸山「今みたいな、苦労・・・ぜんぜん、知らなかった・・・」
永井「毎日、毎日、友達と、土ぼこりをあげて、走り回って・・・先なんてわかんなかったな・・・」
和田「ただ、目の前の砂場で・・・トンネルを掘ることに・・・一生懸命だった。」
戸山「トンネル・・・あたしは、お城だった・・・」
和田「女の子っぽいね」
戸山「水を少し混ぜてね・・・固めて、固めて・・・でも、雨降った次の日には・・・きれいさっぱり、なくなってた」
永井「そこを、また、一から作るのも、苦じゃなかったよね」
ふたり「(うなずく)」
永井「あのとき・・・砂場の先の・・・校庭の地平線に、今のこの、ハードルが見えていたら・・・僕らは大人にならなかったんじゃないかな・・・」
  和田、戸山、ふたり、顔を見合わせて
ふたり「くさい」
永井「な・・・なんだよ!」
和田「よ!たまにはいいこというねー(ばしりと叩く)」
永井「たまにはじゃないよ。いつも、いつも」
戸山「(笑い)その、うまい言葉、あたしにもかけてよ」
永井「え・・・」
戸山「(少し歩いて)・・・来年も・・・期待してる・・・」
永井「?」
戸山「期待してるよ」
永井「(まだ意味わからず)」
戸山「(鈍感な永井にしびれを切らし)バースディ!楽しみにしてる・・・」
永井「(やっとわかって、にっこり)」
和田「おやおや、どうやら、単純なことで復活ですな・・・」
戸山「単純じゃないよ」
和田「そこが単純じゃない?」
永井「今、おもったんだけどさ、なんか、僕たちって、簡単なことを難しく、難しく考えてるような気がする。難しく考えて、悩んだり、そこにかっこよさをみつけて、うぬぼれてしまったのが悪い大人のような気がする」
戸山「難しく考えてたら、先がみえなくなってるかもしんない」
和田「そうだね。」
戸山「あと、もうひとつ決めたことある」
永井「なに?なに?」
戸山「会社、やっぱ、やめるわ」
ふたり「・・・」
戸山「さっき、千佳ちゃんにいっぱい怒られたんだ。なんか、やればできることを自分のプライドで狭めてきた気がする。これができない、あれができないってね。ここはひとつ、初心にもどりまして」
永井「え、ひょっとして」
戸山「映画監督、目指すよ」
和田「・・・」
戸山「(にっこり)」
永井「・・・よく、考えたの?
戸山「千佳ちゃんと同じ質問するねー。考えたよ。ずっとぼんやり考えてて、今日のこれが引き金になってくれた。はっきり、その形が見えたんだ、今・・・」
永井「(まだ疑う)」
戸山「(にっこり)」
永井「・・・わかった。応援してる」
和田「そっちが決心ついたならあたしも・・・会社―」
永井「え?」
戸山「千佳ちゃんも・・?」
和田「ばーか!やめないよ!」
永井「なんだ」
和田「ちょ、ちょっと、なんだとはなによ。」
戸山「なんだ、て思うよ」
和田「いいの!日本帰ったら、また新作フード作るよ!今度は一般庶民でも買える、それでも質のいい魚使って、作ってやるよ」
永井「それ、いつ考えたの?」
和田「日本にいたころからやっぱ、ぼんやり考えてたけど・・・昼ね」
戸山「ほら、やっぱり、ワニ歩きで考えてた」
和田「ごめん。魚見ちゃうと・・・つい・・・ねえ・・・」
永井「じゃ、僕は、今年中にこれに続いてヒット作、当てるよ!」
戸山「雄君はしっかり考えてる?」
永井「ぼくも、日本のころぼんやりと・:・」
和田「あんたはありえない、ありえない」
永井「ほんとだってば!ば、ばかにすんなよ!絶対、客がわんさかわんさか集まる旅行企画、プレゼンしてやる!」
戸山「おーし、その意気だ」
和田「クリスマスあたりにでも、みんなで報告会やろ!みんなの途中経過とか、結果とか」
戸山「プラン・ドゥ・シーですか?」
和田「そうそう。計画たてて、実行して、反省する。その繰り返しだ!」
永井「結局、大人、大人してしまったかな」
戸山「子供じゃ、走ってくだけだからね、目標に」
ナンダ「マタ、ネガイガ、カナイマシタネ」
和田「未来が・・・見つかる」
戸山「悩みが・・・消える」
ナンダ「アタシハ、ソノ、オヤクニタテテ、ソシテ、ミナノエガオニ、デアエタダケデ、シアワセデス」
  三人、にっこり
永井「でも、さっき、なんか気になること言ってたな」
和田「なに?」
永井「明日は・・・九月八日は・・・タイムカプセル発掘式って」
三人「(顔を見合わせて、驚く)」
ナンダ「フフ・・・コマッテシマイマシタネ・・・」
和田「こまってしまったじゃないよ!」
戸山「どうすんの!」
永井「ど・・・どうしよ・・・」
和田「に・・・にげよ!」
戸山「無理だよ」
永井「ここまで、山を荒らしてしまったんだ。」
戸山「わかるよ・・・普通・・・」
和田「じょ、ジョーク、ジョーク」
ナンダ「アタシハ、ウメナオセバ、ナントカナルトオモイマス」
和田「そうだね、とりあえず、埋めようか」
戸山「そ、そうしよう」
  和田、戸山埋めなおそうとする
  そのとき
永井「ちょっとまった!」
三人「(止まる)」
永井「ここにこのまま、置いておこう」
三人「!」
永井「埋めなおすのは確かに正解だ。でも、さすがにここまでしたらやばいよ。こうなったら開き直って、このままここにおいておこう」
和田「あたしたち、つかまっちゃうかもしんないよ」
永井「いや、逆にわかりやすくこうすることで、捜査が混乱するかも」
和田「そんな、推理ドラマみたいには・・・」
永井「面白くない?」
和田「そ・・・そうかな・・・」
戸山「やってみない?
和田「え?」
戸山「やってみようよ。あした、この学校の人たち、みんなびっくりするよ。こんな大きなことって日本じゃなかなかできないよ。」
永井「ひさしぶりに、大きいイタズラしてみようよ」
戸山「帰国して後悔する前に、ね?」
永井「ね?」
和田「・・・」
ナンダ「アタシモ、ヤッテミタイナ・・・」
和田「あんたまで・・・」
永井「はい、多数決で決定!」
戸山「異議なし!」
和田「異議あ・・・」
永井「多数決は小学校のとき、ゼッタイだってならったもんね」
和田「少数意見も重視するんだよ」
戸山「はい、多数意見にまかれてください。いやなとこっていったのは訂正するから」
和田「・・・」
  和田、うなづく
  朝の鳥の鳴き声
永井「よーし、かえろ」
戸山「こんな、オールは初めて・・・」
ナンダ「カジイモトジロウノ『レモン』ミタイデスネ」
永井「へー、日本の作家も読んでるんだ
ナンダ「エエ」
和田「ね、ほんとにいいのかな・・・」
ナンダ「イインジャナイデスカ?タビノハジハ、カキステ・・・サウスアイランドニ、ステテイッテクダサイヨ、ザイアクカン」
和田「そ、そうかな・・・」
永井「ナンダさん、あしたの・・・ああ、日付変わってるんだ・・・今日の天気予報は?」
ナンダ「アツイデスヨ・・・キョウモマタ・・・」
 三人、朝日を見る
 そして、ナンダ、戸山、和田の順番に帰っていく
 最後、永井、缶をみつめてから
 舞台に置く
 永井、はける
 そこには缶がある
 暗転  END